- 『定年就活 働きものがゆく』
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60歳の妙子は定年後も継続雇用の話を受けるつもりだったが、後輩女子たちのからかいと同年の課長の栄転話に頭にきて、意地でうっかり会社をやめてしまう。
一人暮らしに暇を持て余した妙子は就活を始めるが、どこもハラスメントな会社ばかり。
しかも娘夫婦の15歳の養女・瑠希が転がり込んできて――。
「定年」「就活」のサバイバル小説。
第一回優秀作決定、堀川アサコ『定年就活 働きものがゆく』!
- 江口
- では、第1回の「いきなり文庫! グランプリ」の選考会を始めたいと思います。これは最近、文庫オリジナル作品が多く、また面白いものがけっこう多いので、素晴らしい作品を表彰しようではないか、という意図のもとに企画しました。毎回その回の優秀作を選び、その作品が過去の類似テーマの作品に比べて、抜きん出ているのかを論議検討し、すぐれた作品は年末の大賞選考会の最終候補に残して、各回で選ばれた作品と闘ってグランプリを決めようということです。
- 北上
- 年度末の大賞選考会に残れない作品はどうするの?
- 江口
- 今回の優秀作としてその栄誉を大いに讃えたい。
- 吉田
- 今回の1冊に選ばれただけですごいですよ。こんなにたくさんオリジナル文庫が出ているのに、その回の1作に選ばれるわけだから。
- 北上
- そうだね。
- 江口
- 第1回は今年の1月からこれまでに刊行されたものの中から、編集部事務局が優秀作を選びました。堀川アサコさんの『定年就活 働きものがゆく』です。ええと、毎回、北上さん、書評家の吉田伸子さんと私の3人で論議していきます。
- 吉田
- よろしくお願いします。
- 江口
- 参考テキストが、重松清さん『定年ゴジラ』、内館牧子さん『終わった人』、辻村深月さん『朝が来る』の3作。これらの先行作品に比べて、堀川アサコさんの『定年就活 働きものがゆく』がどうなのかを論じていきましょう。
- 北上
- 毎回、そういうかたちでやっていくわけね。
- 吉田
- すごい傑作ばかりですよ。この3作よりすぐれているかどうかということですか?
- 江口
- 必ずしもそういうことではありません。比較して勝ち負けを決めるということではなく、その作品が先行作品に比べてどういう新しさを作り上げているか、その特徴を浮き彫りにするための参考資料とお考えください。ええと、前置きはこんなところでいいですか。
- プロフィール
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北上次郎(きたかみ・じろう) 1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。趣味は競馬。
2023年1月19日逝去。 -
吉田伸子(よしだ・のぶこ) 青森県出身。書評家。「本の雑誌」の編集者を経てフリーに。鋭い切り口と愛の溢れる書評に定評がある。著書に『恋愛のススメ』。
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江口洋(えぐち・ひろし) 神奈川県出身。集英社文庫編集部次長。本企画の言い出しっぺ。