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コラム
We Love Books
第一回「エンカウンター」ブックユニット
本と人とが運命的に出会う場所   2006.06.15
〈文・小山田桐子〉

代表の内沼さん
代表の内沼さん
その他にも、『いちど尾行をしてみたかった』といういかにもイケナイ本など心そそられる本がたくさんあったのだが、すでにエンカウンターを体験して、一時間以上が経過。我々は読書タイムを終了し、この心地いい空間の仕掛け人であるブックピックオーケストラの代表・内沼晋太郎さんにお話を聞いてみた。

 まず、なんと言っても気になるのは、やはり、こうした独特な空間を作ろうと思ったきっかけだ。

「ずっと、人と本の出会いというテーマに取り組んでいるんです。本が売れないということが言われてきていますが、出版や流通や書店など、既存の仕組みでは、本の面白さが伝え切れていない部分があるのではないか、と思ったのが動機です。袋に入れて中身を分からなくしたのは、本が売れないひとつの原因に、日々出版される本の数と、それらにまつわる情報や文脈の量が多すぎて、結果的にどれも選ぶことができない、というのがあると考えたからです。中身を見えなくすることによって、選ぶための基準をフラットにして、逆に選びやすく、手に取りやすくしているんですね。あとは、何が出てくるのか分からないのって、本好きじゃなくても、単純にプレゼントを開けるような気分で、わくわくするんじゃないかな、というのもあります」

 訪れた多くの人が、普段読まない本との出会いを楽しんだというが、中には意外な感想もあったそう。

「中身が分からない袋で本を選ぶという行為が、占いのようだという声がありました。偶然手にした本が、今自分が必要としているものを伝えてるんじゃないかと。そういう楽しみ方もあるのか、と驚きましたね(笑)」

 なるほど、私が引き当てた『競馬の知恵 新しい馬券の買い方』だと、「もっと大胆に勝負に出てみて!」といった感じだろうか(笑)。当たっているかはともかく、こうして、利用する側が自分なりに工夫して楽しめる自由さも、エンカウンターの魅力だろう。

 このエンカウンターだが、なんとも残念なことに、2006年10月8日に閉店してしまうのだという。

「もともと、一年という期限を決めていたんです。どうせ何かをやるなら、その期間に来ないと二度と体験できない、という特別なものにしたかった。例えば何年か経って、「あの場所行った?」と本好きの間で話題になるものになればいいな、と。閉店後の予定はまだちょっとはっきりしないのですが、また別の場所で何かできたら、と思います。ただ場所によって、そこに合う形というのはあると思うので、今とはまたちょっと違う形になるかもしれません。なので、気にはなっているんだけど、まだ来ていただけていない方は、今、ここでしか体験できないエンカウンターという場所に是非足を運んでいただきたいですね」

 本当に本好きな人たちが、自ら楽しんで創り上げたことが、強く伝わってくるエンカウンターという空間。後に、本好きの間で、伝説になること必至のこのブックルームで、遊び心あふれる試みと思わぬ本との出会いを体験してほしい。



エンカウンター
会員制・予約制・入場料制の期間限定ブックルーム。2005年2月から3月にかけて、BankART studio NYKにて開催された「よむ」アート作品展「Reading Room」に出展の現代美術作品『encounter.』を再現したもの。封筒に包まれた、中身が分からない本を選ぶというユニークなシステムにより、利用者は本との偶然の出会いを楽しむことができる。開封した本、既に開封された本を購入することも可能。

住所:〒231‐0003 横浜市中区北仲通5-57 北仲WHITE114

運営:ブックピックオーケストラ

会員登録、予約受付はエンカウンターのホームページにて。

http://www.super-jp.com/bookpick/encounter/

  3 
Back number
第一回
  『エンカウンター』
本と人とが運命的に出会う場所
第二回
  『六本木ライブラリー』
人と人を結ぶ、大人の自由空間
第三回
  『TRICK+TRAP』
すべてのミステリファンの「書斎」
第四回
  『国立国会図書館』
何回生まれ変わると全部読める?
第五回
  『「詩のボクシング」全国大会』
声のパンチ、言葉のパンチ
第六回
  『COW BOOKS』
「BOOK BLESS YOU」
第七回
  『読書グッズ特集』
本が好きだから作りました
第八回
  『魔法のiらんど』
ケータイ小説の魔法
第九回
  『ボイルドエッグズ』
才能の代理人
第十回
  『ショートソング』
小説が漫画になるとき
第十一回
  『池袋コミュニティ・カレッジ』
本読みの達人になるために
最終回
  『LOFT/PLUS ONE』
作家も一日店長に!?
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