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コラム
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第五回「『詩のボクシング』全国大会」
声のパンチ、言葉のパンチ   2006.10.18
〈文・小山田桐子〉
優勝が決まる瞬間……!
優勝が決まる瞬間……!
 結果は、4対3というジャッジで、木村さんの優勝。見事、木村さんが第6回「詩のボクシング」全国大会のチャンピオンに輝き、ファイト・マネーとヤノベケンジさん製作の個性的なチャンピオントロフィーを受け取った。そして、木村さんは、「普段から、言葉は水だと思っているのですが、たくさんの美味しい水をいただいて、今日は帰ります。ご馳走様でした」とこの大会を楽しんだことをうかがわせるコメントを口にした。
 木村さんだけでなく、出場した全員が、そして、出演者を応援しに来た身内の人、純粋に詩を聞きに来た人、人に誘われて初めてやって来たような人、誰もかもが、顔に高揚感を浮かべ、楽しそうにしている。
 私も高揚感に体がぽかぽかするのを感じながら、Iさんと心に残った朗読や朗読ボクサーについて語りながら、会場を出た。
 もう、すっかり観戦を楽しんだ我々は、もっと「詩のボクシング」について、その精神や背景を知るべく、この大会の総責任者であり、日本朗読ボクシング協会の代表である、楠かつのりさんに話をうかがった。まずやはり気になるのが、どうしてボクシングになぞらえた対決にしたのか、ということ。
「2人で闘うということと、言葉のパンチというか、人の心を打つという意味も込めて、ボクシングという言葉を使うことにしました。2人ずつで闘うことにしたのは、より聞きやすくするためです。声って前のものほど印象が薄くなるので、あまり審査対象が多いと、思い出せない人が出てきたりするんですよね。2人の詩を聞き比べるのであれば、聞く側が基準を設けやすく、どっちの方が自分の心に届いたか判定しやすい。『詩のボクシング』は表現を育てるだけでなく、聞き方を育てる場でもあるんです」
 聞く力がつくことが、伝える力にも繋がると楠さんは言う。確かに、様々な表現があるこの「詩のボクシング」という場は、聞く力を育てるには格好の場所だろう。
「朗読されるものの中には、よく分からないものもあります。でも、分かりやすければ、いいかというとそれは違うと思うんです。分かるけど、何も伝わってこないものはたくさんある。分かりにくいけど、何か心に残ったら、それはその人にとって良い詩なのだと思います。そういう様々な表現を体験することで、感じ方というのは育つと思っています。また、『詩のボクシング』ではただ言葉の内容だけでなく、身体的な動きも、その表現に含みます。パフォーマンスというと、何か悪いことのように言う人もいますが、人の前に体を晒して、体を通して言葉を発するのに、体が何も感じていないということはありえません。その感じていることが身体の動きとなって表れてくるのは自然なことです。それに言葉は体得されているからこそ使い物になるのです。詩というと、言葉を重視する方が多く、審査員の方にも、活字にした作品を事前に資料として欲しいとおっしゃる方もいたりします。でも、文字を目で追いながら、朗読を聞くのではなく、『詩のボクシング』の会場ではやっぱり、その人の声、そして動きもあわせて、つまるところ五感をフル稼働させて空間丸ごとを味わってほしい」
 この大会では、詩という一般的なイメージとは異なる、様々な表現が登場するが、その表現を感じ、判断するのはあくまで観客なのだと言う。

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第一回
  『エンカウンター』
本と人とが運命的に出会う場所
第二回
  『六本木ライブラリー』
人と人を結ぶ、大人の自由空間
第三回
  『TRICK+TRAP』
すべてのミステリファンの「書斎」
第四回
  『国立国会図書館』
何回生まれ変わると全部読める?
第五回
  『「詩のボクシング」全国大会』
声のパンチ、言葉のパンチ
第六回
  『COW BOOKS』
「BOOK BLESS YOU」
第七回
  『読書グッズ特集』
本が好きだから作りました
第八回
  『魔法のiらんど』
ケータイ小説の魔法
第九回
  『ボイルドエッグズ』
才能の代理人
第十回
  『ショートソング』
小説が漫画になるとき
第十一回
  『池袋コミュニティ・カレッジ』
本読みの達人になるために
最終回
  『LOFT/PLUS ONE』
作家も一日店長に!?
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