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コラム
We Love Books
第八回「魔法のiらんど」
ケータイ小説の魔法   2007.01.19
〈文・小山田桐子〉
「魔法の図書」写真
「魔法の図書館」写真
 本好きなら一度は行ってみたい場所、挑戦したいことを紹介する『We Love Books』。今回は、若者の間でひとつのカルチャーとして確立した感のある、ケータイ小説について、ブームの牽引役であるサイトの「魔法のiらんど」さんにお話をうかがってきました。
 ケータイというものを、「主に電話」として使用している、私にとって、ケータイで小説を読むということは、かなり不思議な現象。しかも、作家ではない一般の人が小説を発表して、読者を集め、それが書籍化され、大ベストセラーになっていると聞いては、その魅力について知りたくなるというもの。今回も、若手編集者Iさんと、取材にいってまいりました。

 さて、「魔法のiらんど」とは、無料のホームページ作成ができるサイト。1999年、iモードの創世記にスタートしたのだという。携帯で自分のホームページが無料で手軽に開けるということで、口コミで利用者が急増。始めたときは一日、300ほどだったアクセス数が、一週間で3万アクセスに跳ね上がり、さらに一ヶ月後には40万、一ヶ月半後には120万という伸びを示したというから、本当に驚異的。口コミの力、恐るべしだ!
 この「魔法のiらんど」は、アーティストを目指す人や、応援する人など、自己表現の場として利用されることが多かったため、サイト側が、簡単に小説を公開できるBOOK機能を付けたのが、ケータイ小説の始まりだという。そのケータイ小説が大きな話題を呼び、読者を集めたことから、「魔法の図書館」というコーナーを設置。より多くの注目を集めるようになった。
 この「魔法の図書館」のチーフプロデューサーである伊東さんにお話をうかがった。
「『魔法の図書館』をオープンさせたのは、2006年の3月のことですね。ケータイ小説というものがここまで爆発的に注目され人気が出てきたのは、ここ一、二年のことだと思います」
 今では70万タイトルほどのケータイ小説が公開されているというこの「魔法の図書館」。ランキングやレビュー機能などもあり、読者がケータイ小説と出会いやすく、積極的に楽しみやすいコーナーとなっている印象。
 ケータイ小説を書いている人たちは、小説を初めて書くような人たちばかりだ。書籍化されたケータイ小説家の人たちも、作家になりたいと初めから思っていたわけではなく、中には小説を読んだこともない人もいるというから驚く。
「小説というものを書こうというよりは、自分の体験をちょっと客観的に書いてみよう、という風に書き始める人が多いですね。自分のために書き出した人が、それが人に読まれてコメントをされることにより、読者の存在を意識して、変わっていく。それでも、自分は作家である、と思って書いている人はほとんどいないですね。だから、読者と目線が近い。使われている言葉はメールの延長線上のようなもので、ほとんど話し言葉に近い文体で構成されている傾向があります。書かれていることも、非常にシンプル。悲劇的なことは描かれているけれど、友達の友達といった周りの人が体験しているようなことだったりして、中高生の読者にとって、感情移入しやすいのだと思います」
 確かに友達から話を聞いているような感じが、ケータイ小説にはある。しかし、中学高校時代の記憶が遠く昔のこととなっている年齢の私にとって、その“友達”が語ることにジェネレーションギャップを感じることも多かったのは事実。好きになる相手はギャル男かあ……と、思わず遠い目をする私。でも、知人の女子大生にメールで、ケータイ小説について聞いたところ、「恋愛小説とかこんな体験してみたい、と思ったりするよ☆」とのこと。まあ、共感できないところばかりではなく、女の子のグループ内の微妙な感じ(ものすごく仲がいい子と、そうでもない子のバランスとか)など、ああ、あったなあ、と思う部分もたくさんある。伊東さんも「今の若い人の文化は分からないこともありますが、人を思う心など普遍的な部分があると感じる」と語る。
 ケータイ小説を読んで読者が感じたことはすぐさまコメントとして書き込まれる。そうしたダイレクトな反応があるのがケータイ小説の特徴のひとつだ。温かく応援する読者もいれば、きつい言葉で批判する読者もいる。そうした、きつい言葉に傷ついて、サイトを閉めてしまうケータイ小説家もいるという。しかし、温かい励ましで再スタートする人も多いとか。そうした、書く人と読む人の近さ(それは作品の内容にもあると思う)が、ケータイ小説の人気のひとつの理由ではないかと感じた。

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Back number
第一回
  『エンカウンター』
本と人とが運命的に出会う場所
第二回
  『六本木ライブラリー』
人と人を結ぶ、大人の自由空間
第三回
  『TRICK+TRAP』
すべてのミステリファンの「書斎」
第四回
  『国立国会図書館』
何回生まれ変わると全部読める?
第五回
  『「詩のボクシング」全国大会』
声のパンチ、言葉のパンチ
第六回
  『COW BOOKS』
「BOOK BLESS YOU」
第七回
  『読書グッズ特集』
本が好きだから作りました
第八回
  『魔法のiらんど』
ケータイ小説の魔法
第九回
  『ボイルドエッグズ』
才能の代理人
第十回
  『ショートソング』
小説が漫画になるとき
第十一回
  『池袋コミュニティ・カレッジ』
本読みの達人になるために
最終回
  『LOFT/PLUS ONE』
作家も一日店長に!?
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