コラム
We Love Books
第三回「TRICK+TRAP」ミステリ専門書店
すべてのミステリファンの「書斎」   2006.08.18
〈文・小山田桐子〉
まるで書斎のような雰囲気
まるで書斎のような雰囲気
 本好きなら一度は行ってみたい場所、挑戦したいことを紹介する「We Love Books」。今回は、東京・吉祥寺にある「TRICK+TRAP」に行ってまいりました。
「TRICK+TRAP」は日本で唯一のミステリ専門書店。「驚愕のトリック」「密室」「名探偵」などという言葉に胸がときめく私にとって、とても気になる存在だ。今回も、取材に同行してくれたのは、若手編集者Iさん。吉祥寺駅からお店に向かう間、Iさんのミステリ読書歴を聞いてみたところ、そんなに読んでいないという。本好きでミステリを通過していない人も珍しい、とさらに追求していると、「江戸川乱歩賞の本だけは、読んでるんですけど」とIさん。なんでも、お父さんが毎年決まって買ってくるのだそう。なぜ、乱歩賞のものだけ?とIさんの家のミステリに頭を悩ませているうちにお店の前に到着。マンションの一室を改造して作ったお店ということで、派手な看板が立っているわけでもなく、知らなければ見逃してしまうかもしれない普通の外観。しかし、2階のお店がある場所の窓を見上げると、本という文字とホームズのシルエットが! それだけで、ミステリ関係の書店だということが伝わる、素敵な遊び心だ。

店主の戸川さん
店主の戸川さん
 階段を上り、いよいよ扉を開ける。中は開けてすぐ見渡せる広さだが、視界一面が本で埋め尽くされている様は圧巻。しかし、決して圧迫感があるわけではなく、書斎風の落ち着いた雰囲気である。一歩入ってすぐ両脇にも本がある。右手はお店が薦める注目書、左手は主に子供向けの本が並ぶ。子供の頃に夢中になったホームズや江戸川乱歩のシリーズの背表紙を眺めるうちに、図書館で借りた本を親の声も聞こえないほど夢中になって読み耽ったこと、返却のたびに親友との別れのようにとても悲しくなったこと、など様々な記憶が蘇る。大人買いという手段のある今なら、一生手元に置くことができる……しかし、スペースの問題があるなあ、と本気で頭を悩ませていると、Iさんが、「あ、僕、江戸川乱歩のシリーズだけは読んでました」と少年探偵団のシリーズを手に取った。どうして、Iさんのミステリ読書歴は、江戸川乱歩関係に著しく偏っているのか……謎はさらに深まる。
 その謎は置いておいて、店の奥へ。出迎えてくれるのは、書店員の戸川安宣さん。元東京創元社の編集者である戸川さんは週5日、ひとりでこのお店を取り仕切っているという。接客の合間を縫って、まずは気になる、ミステリ専門の特殊な書店が生まれた経緯を聞いた。
「小林まりこさんというオーナーがミステリ好きだったんです。それで、新しいお店を開く際に、どうせやるなら変わったことをやろうと、ミステリ専門書店を立ち上げました。だから、ちょっと道楽に近い感じのお店なんです。街の本屋さんがどんどん潰れている時代、雑誌やマンガの棚がない上に、ミステリしか置いてない書店が利益を上げるのは難しい。ですから、本当に採算度外視することで成り立っているお店なんですよ」

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第一回
  『エンカウンター』
本と人とが運命的に出会う場所
第二回
  『六本木ライブラリー』
人と人を結ぶ、大人の自由空間
第三回
  『TRICK+TRAP』
すべてのミステリファンの「書斎」
第四回
  『国立国会図書館』
何回生まれ変わると全部読める?
第五回
  『「詩のボクシング」全国大会』
声のパンチ、言葉のパンチ
第六回
  『COW BOOKS』
「BOOK BLESS YOU」
第七回
  『読書グッズ特集』
本が好きだから作りました
第八回
  『魔法のiらんど』
ケータイ小説の魔法
第九回
  『ボイルドエッグズ』
才能の代理人
第十回
  『ショートソング』
小説が漫画になるとき
第十一回
  『池袋コミュニティ・カレッジ』
本読みの達人になるために
最終回
  『LOFT/PLUS ONE』
作家も一日店長に!?