コラム
We Love Books
第十一回「池袋コミュニティ・カレッジ」
本読みの達人になるために   2007.04.20
〈文・小山田桐子〉
 本好きなら一度は行ってみたい場所、挑戦したいことを紹介する『We Love Books』。今回は、カルチャースクール、池袋コミュニティ・カレッジを取材してきました。
 カルチャースクールというと、文芸関係では、小説やシナリオの書き方を学ぶところ、という偏ったイメージがあったのですが、今のカルチャースクールの講座は本当に多種多様なものがあるんですね。
 池袋コミュニティ・カレッジの講座も、もちろん、王道の「小説の書き方」といった講座もありつつ、「朗読健康法」といった語り系から、「古文書の解読法」といった歴史系まで、まさにかゆいところに手が届く、いや、そういえばそこかゆかった!と気づかされるような充実ぶりです。
 そんな中、今回、取材をさせていただいたのは、多くの雑誌で活躍する書評家の豊崎由美さんによる「書評の愉悦 ブックレビュー読み書き講座」。今回も若手編集者Iさんと、授業にお邪魔してまいりました。

豊崎由美さん
豊崎由美さん
 常に満員の人気講座だという豊崎さんの授業はとてもユニーク。なんと句会形式での授業なのです。書評は提出順に番号を振られ、どれが誰のものか分からない状態で、受講生たちに事前に送られます。それを、それぞれに読み込んで、3点満点で点数をつけ、合計得点が一番高かった人が、その回の書評王と呼ばれるとのこと。

ねにもつタイプ
『ねにもつタイプ』
岸本佐知子・著
 伺った時の課題本は岸本佐知子さんの『ねにもつタイプ』。翻訳家である岸本さんのエッセイなのですが、コアラの鼻の材質について思索にふけったり、「ホッホグルグル」という謎の言葉がどうしても頭から去らず、悩まされたり、と日常に空想や妄想がたっぷりと混じり合った、一風変わった一冊。その要約しづらく、伝えづらい魅力をいかに伝え、いかに切り取るかにそれぞれが苦心しているのが、提出された書評を読んでいても感じられます。

 また、自由課題のテーマは、“D.T.(童貞)”。これはみうらじゅんさんと伊集院光さんとの共著のタイトルですが、童貞をテーマに一冊と限らず数冊の本を紹介するもの。「難しかったのか、提出数が少なかった」と豊崎さん。確かに、童貞と聞いて、具体的な本もなかなか思い付かないし、切り口も考えつくのも大変そう。

 そんな中、今回の書評王に輝いたのは、“D.T.”というテーマに挑んだ女性。
『愛神の戯れ-牧歌劇「アミンタ」-』(トルクァート・タッソ著)という一般には馴染みの薄い古典を取りあげながら、その書評を読み終えるころには、親しみさえわいてくるような、見事な書評でした。
「すごくうまい。いい加減に書いているようで、凝った構成だよね。語り口を軽くすることで、古典への敷居を低くしている」と豊崎さんも絶賛。
“D.T.”という難しいテーマを、“脱童貞物語には、その応援団が存在する”という一風変わった切り口で軽やかに紹介しています。ほとんどの人が高得点をつけ、文句なしの書評王となりました。

1     次へ
 
Back number
第一回
  『エンカウンター』
本と人とが運命的に出会う場所
第二回
  『六本木ライブラリー』
人と人を結ぶ、大人の自由空間
第三回
  『TRICK+TRAP』
すべてのミステリファンの「書斎」
第四回
  『国立国会図書館』
何回生まれ変わると全部読める?
第五回
  『「詩のボクシング」全国大会』
声のパンチ、言葉のパンチ
第六回
  『COW BOOKS』
「BOOK BLESS YOU」
第七回
  『読書グッズ特集』
本が好きだから作りました
第八回
  『魔法のiらんど』
ケータイ小説の魔法
第九回
  『ボイルドエッグズ』
才能の代理人
第十回
  『ショートソング』
小説が漫画になるとき
第十一回
  『池袋コミュニティ・カレッジ』
本読みの達人になるために
最終回
  『LOFT/PLUS ONE』
作家も一日店長に!?