図書室
対談
◆『ムボガ』文庫化記念対談◆ 原 宏一VS高野秀行 『青春と読書』2008年10月号より転載
ディテールに酔え「原ワールド」
日常に潜む不条理をやわらかなユーモアで描きだす原宏一さん。昨年、短編集『床下仙人』が大きな話題となり、いま熱い注目を集めています。『ムボガ』を皮切りに、『かつどん協議会』『極楽カンパニー』が集英社文庫より刊行予定の原さんと、『ムボガ』解説執筆者で「エンタメ・ノンフ」(エンターテインメント・ノンフィクション)の旗手、高野秀行さんとの対談は、小説とノンフィクションの間(あわい)を行き来する興味深いものとなりました。対談場所は、中年のアマチュアバンドと在日アフリカ人の交流を描いた『ムボガ』にちなみ、新宿にあるアフリカンレストラン&バー。ナイジェリアの薬草酒を味わいつつ、熱い夜はゆるゆると更けていきました。
細部が異様にリアルな「原ワールド」
高野 いまちょうど『ムボガ』の文庫解説を書いているところですが、書きたいことがいっぱいありすぎて。このままだと論文みたいになってしまいそうです。
 ありがとうございます。
高野 去年頃からどこの書店に行っても『床下仙人』が積まれていて、ふだんはみんなが読んでいるものは読みたくない、ベストセラーに染まりたくないと思っているんですが、つい気になって読んだら、残念だけど(笑)、ものすごく面白かった。少し前にアフリカに取材旅行に行ったときは『姥捨てバス』を持っていって、読み終わった本を次に来る日本人のためにヨハネスブルグの宿に置いてきました。『姥捨てバス』に描かれた高齢化社会とは全然違う、子沢山のアフリカで読むっていうのは場違いかもしれないんですが(笑)。
 いえいえ。そんな場所に僕の本があると考えただけで、すごくうれしいです。
高野 取材旅行が終わって日本に帰ってきたら、今回の文庫解説と対談のお話をいただいて、まるで原さんの小説のような不思議な展開でびっくりしました。原さんの小説はぜんぶ読ませていただいたんですが、いちばん最初の作品は……。
 一九九七年の『かつどん協議会』です。僕は以前フリーランスのコピーライターをやりながら、小説を書いては新人賞に応募していたんですが、万年最終候補でした。『かつどん協議会』は海燕新人賞の最終候補になって、これもやはり賞はとれなかったんですが、編集者のかたが声をかけてくれて本になりました。でもご存知かと思うんですが、なかなか本が売れなくて(笑)。『床下仙人』は、目をとめてくださる書店員さんがいらして、去年になって突然売れ出しました。自分でもびっくりしちゃってるんです。
高野 気持ちはよくわかります。僕の本もつい最近まで全然売れなくて、書店員さんの会でおすすめ図書に選ばれて急に売れはじめたので。このことも含めて原さんと僕は似ていますが、既存のジャンルに入らないという点でも同じですね。原さんの「変」さは、どのジャンルにも入らない(笑)。


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〈プロフィール〉
原 宏一原 宏一
はら・こういち
●作家。
1954年長野県生まれ。97年『かつどん協議会』でデビュー。著書に『極楽カンパニー』『姥捨てバス』『床下仙人』『天下り酒場』『ダイナマイトツアーズ』等。
高野秀行高野秀行
たかの・ひでゆき
●作家。
1966年東京都生まれ。大学在学中に執筆した『幻獣ムベンベを追え』でデビュー。著書に『ワセダ三畳青春記』(酒飲み書店員大賞)『アジア新聞屋台村』『辺境の旅はゾウにかぎる』等。
ムボガ
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撮影協力
アフリカンレストラン&バー エソギエ
http://www4.point.ne.jp/~esogie/

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◆『ムボガ』文庫化記念対談◆
原 宏一VS高野秀行