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対談
◆「スペシャル対談」◆ 北京五輪陸上銅メダリスト 朝原宣治×「夏から夏へ」著者 佐藤多佳子
 2007年夏、大阪世界陸上でアジア新記録をマークした日本代表4継リレーチームは、08年夏、北京五輪で銅メダルに輝いた。日本陸上のトラック競技のメダル獲得は80年ぶり、リレー競技では初の快挙だった。あれから約2年後、大阪で二人は再会した。
佐藤 お久しぶりです。
朝原 この前、取材していただいたのは、北京五輪のすぐ後でしたね。僕が選手を引退した時でした。
佐藤 あれから、まただいぶ時間がたったので、心境の変化があるかなと、改めてお聞きしますね。大阪世界陸上は、北京五輪の前哨戦という感覚がありますか?
朝原 いえ、そうではないです。僕にとって大阪は、やはり特別な大会でしたね。リレーでもしメダルをとっていたら、僕はそのまま引退して、北京を走ったかどうかもわかりませんし。リレーに関しては、大阪と北京というのはつながっていますが、大会そのものは、僕の中では一つ一つが、まったく別物です。
佐藤 一般的なイメージとして、リレーで大阪の新記録、次に北京のメダル獲得と、ステップアップした認識はありますよね。
朝原 そうですね。でも、大阪は地元で開催される世界陸上だったので、やはり特別な印象として残っています。観客の顔や声援の力を、僕の中にきっちり残しておこうと思って臨みました。オリンピックは大事な大会だけれど、北京のための大阪、ではなかったです。
佐藤 大阪のリレーの決勝で、観客が全員でうわーっと応援するという感覚は、取材をしたこちらも忘れがたいものがあります。北京五輪も人が多くて独特な雰囲気でしたけどね。
朝原 北京では、競技に集中した結果、9万人という大観衆が、ベターッとした壁のような風景として僕の中に残っています。
佐藤 北京の銅メダリストになられた直後、朝原さんは「予選でいい位置をキープし、絶対に期待されている責任というのが大きくて、うれしい以上に終わってホッとした」というふうにおっしゃっていたのが強く印象に残っています。その後、気持ちは変化しましたか?
朝原 もちろんメダリストという事実もしっかり認識しています。かといってメダルをとったことに執着しているのでもなくて、自分の中でいい距離感を保っているというような感じです。
佐藤 しっかり自分の中のあるべきところに収めてあるということですか。
朝原 メダルに固執するのでもなく、誇りに思い、ただただ自然に僕の中に存在する ということです。
佐藤 ゴール直後に「やったー!」と放り投げたバトンは結局、見つかったんですか?
……気になるバトンの行方は? 対談の続きは「夏から夏へ」で読めます!
 
〈プロフィール〉
佐藤多佳子
1962年東京都出身。89年に月刊MOE童話大賞を受賞し、デビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年に産経児童出版文学賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。2007年『しゃべれどもしゃべれども』が映画化。高校生の短距離走者を描いた『一瞬の風になれ』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を受賞。
http://www009.upp.so-net.ne.jp/
umigarasu-to/
朝原宣治(大阪ガス)
1972年兵庫県出身。93年に国体100mで日本新記録を樹立、以後100mの日本記録を2回更新、日本選手権は5回優勝、2002年アジア大会で2位、五輪と世界陸上で5回準決勝に進出。4回目の五輪となった2008年北京五輪4×100mリレーで銅メダル。同年秋、引退。
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朝原宣治×佐藤多佳子