航空小説の名手がF−4戦闘機退役のときに放つ万感の新作
- レジェンド・ゼロ1985
- 1985年。米ソ冷戦の最中。ソ連が崩壊に向け、まさに断末魔を上げんとする時期。
米韓合同軍事演習のため、アメリカの空母2基が日本海上に滞在。折しも複数の台風が絡み合い、動きが制限されているタイミングで、ある狙いを秘めたソ連の爆撃機の編隊が日本の領空に接近。航空自衛隊の各飛行部隊は、監視のためにスクランブル発進をおこなう。
宮崎県の新田原基地、301飛行隊のF−4パイロット本庄智(ジョー)は、そんな緊迫する状況の中、妊娠している妻に電話がつながらないことを気にかけていた──。
当時の国際情勢や気象条件を綿密にシミュレート。第三次世界大戦が「起こっていたかもしれない」事態と、それに立ち向かった航空自衛隊員の活躍を描いた航空小説。
デビューして30年、上梓した作品も100タイトルを数えた。いつものことな がら過去はふり返るとあっという間だ。
2作目が『ネオ・ゼロ』、主人公が那須野次朗、原稿はデビュー前に書いていた。私にしてみれば、レジェンドにほかな らない。だから今作のタイトルに持ってきた。物語の舞台は昭和60年前後、ソ連 崩壊にともない日本の空が危機にさらされたときだ。書き始めて気づいた。その 頃、那須野はF‐4パイロットとして千歳基地に勤務していたのだった。
鳴海章