よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

第七話 黄鉄鉱の輝き〈前〉

蒼月海里Kairi Aotsuki

 翌日、学校で友人の学(まなぶ)に会った時に、金属鉱物の話をした。
 現代アートのような黄鉄鉱や、ずっしりと重い方鉛鉱、金属とは思えないほど煌びやかな閃亜鉛鉱の話題を、学は目を輝かせながら聞いてくれた。
「金属鉱物かぁ。図鑑やミネラルショーでも何度か見てるけど、カッコいいよなぁ」
 学は、感じ入るようにそう言った。
「透明な石も綺麗だけどさ、金属は男のロマンだよな。あのごっつい石、俺の部屋の棚に飾ってみたいぜ」
「確かに。金属鉱物がずらりと並んでると、男の隠れ家みたいでいいよね」
 僕も学に同意する。
 学は、自室の本棚を片付けようとか、照明の位置を変えようとか石を迎え入れる具体的な算段を話し始めた。
「新宿の本屋さんに入ってるあの店に買いに行こうかな。あそこなら、色んな石を置いてるだろうし」
「ああ。僕も確か、お店に黄鉄鉱が並んでいるのを見たような気がする」
 新宿の大型書店の一階には、鉱物や化石の標本を取り扱っている店がある。
 どうやら、全国のミュージアムショップなどに標本を卸しているようで、よく見かける仕様の標本もずらりと並んでいた。店内の本棚には鉱物に関する本もあり、鉱物の知識も手に入るので、僕はよく通っていた。
「黄鉄鉱はポピュラーな鉱物らしいしね。何処でも出るんだって」
「何処でも? それじゃあ、うちの庭を掘ったら出てくるかな……」
「そ、そこまで何処でもじゃないけれど」
 慌てる僕に、「冗談だよ」と学は悪戯(いたずら)っぽく笑ってみせる。
「黄鉄鉱って、硫化した鉄から成る鉱物なんだって。昔は、硫黄の原材に利用された鉱石だったみたい」
「へぇ。鉄鉱っていうから、鉄の原料になるのかと思ったけど」
「硫黄の成分が多いから、鉄の鉱石にするのは効率が悪いんだって」
 僕の話に、学は「へぇー」と感心する。僕は雫からその話を聞いたものの、黄鉄鉱はナイフよりも硬いし、見た目も金属然としているので、鉄の原料にするのは難しいという話は、あまり腑(ふ)に落ちなかった。
「まあ、石も見た目によらないってことかな」
「だな」と学は頷く。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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