よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

第七話 黄鉄鉱の輝き〈後〉

蒼月海里Kairi Aotsuki

「うん……」
 遺品に触れていると、亡き人がそばにいるような気持ちになるのはよく分かる。僕も、土蔵に入る度に祖父を感じていた。
 そして、それをちゃんと次に受け継ぎたいという想(おも)いも、祖父のコレクション整理をして、石を然(しか)るべきところへと保管したり提供したりしている僕は理解が出来た。
「ごめん、僕がもう少しいいアイディアを持って来れたら良かったんだけど」
 僕は、謝ることしか出来なかった。
 しかし、石倉さんは「ううん」と首を横に振る。
「黄鉄鉱のこと、色々知れて良かった。やっちゃいけないことも分かったし、苦手なことも分かったから、これ以上負担を掛けることもないしね。少なくとも、黄鉄鉱と必要以上に早く別れることはなくなったよ」
「石倉さん……」
 石倉さんは微笑(ほほえ)もうとする。しかし、その笑顔は歪(いびつ)になってしまった。それに気づいた石倉さんは、慌てて顔をそらす。
「ご、ごめんね。黄鉄鉱の話、ちょっとビックリしたみたい。気持ち、落ち着けて来るね」
「あっ……」
 石倉さんは踵(きびす)を返す。声をかけようとしたけれど、石倉さんの走り出す方が早かった。
「ホームルームが始まる前には戻って来るから」
 彼女はそう言って、廊下に出て何処(どこ)かに行ってしまう。学も彼女を追おうとしたものの、そっとしておこうと思ったのかうつむいてしまった。
 だけど、僕の踏み出した足は止まらなかった。
 そのまま石倉さんの後を追いかけ、廊下へと走り出したのであった。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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