よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

第九話 仮晶の夢〈後〉

蒼月海里Kairi Aotsuki

「あの……楠田さん」
「なぁに?」
 楠田さんは、僕の言葉に耳を傾けてくれる。
「お二人の話を聞きながら、ずっと考えていたんですけど、雫(しずく)と僕の間には決定的な違いがあるっていうのは、やっぱり僕が感じた錯覚なのかもしれませんね。もしくは、僕自身が隔たりを作っていたのかもしれません」
「そっか。そういう結論に行きつけたのなら、いいかも」
 楠田さんは、自分のことのように微笑んでくれた。その優しい笑顔を見る度に、彼女を直視するのが恥ずかしくなって、つい目をそらしてしまう。
「樹君?」
「えっと、いえ、何でもないです……。早く、鉱物化した生物の化石を見つけに行きましょう」
「ふふっ、そうだね。律君よりもたくさん見つけよう」
 楠田さんは、拳を握ってやる気を出してくれる。僕も気持ちを切り替えると、楠田さんとともに会場の中を巡り始めた。
 会場内には、鉱物や化石、隕石(いんせき)などの多種多様な石が売られていた。
 その中で、自分の国の民芸品なども一緒に販売しているブースもあった。白樺(しらかば)の皮で作った小箱や、マトリョーシカも並んでいる。
「何だか、お土産屋さんみたいですね」
「面白いでしょう?」
 楠田さんは微笑む。僕は、何度も頷いた。
「石だけじゃなくて、その国の魅力が分かるのって、いいよね」
「そうですね。本場のマトリョーシカを見たの、初めてかもしれません」
 僕は、色とりどりのマトリョーシカを眺める。そのブースでは、カラフルな石も並んでいて、可愛(かわい)らしいと思った。
「あっ、ここは人工鉱物も売ってるお店だね」
「人工鉱物?」
「そうそう。人間が合成したもの。工業用だったり、宝石用だったり、用途は様々だね。日本でも、人工水晶を作っている会社があるんだよ」
「水晶振動子の……」
「それそれ」と楠田さんは頷いてくれた。
「人工鉱物も面白いんだよね。製造方法を聞くと、『へぇー』って感心しちゃうし。人間も、そんな方法で鉱物が作れちゃうんだなぁって」
 楠田さんは、ブースに置かれているガラスで出来たような透明感がある小石を見つめていた。
 ピンクや青、紫に緑など、色とりどりで可愛らしい小石はまとめて安価で販売されていた。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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