よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

第九話 仮晶の夢〈後〉

蒼月海里Kairi Aotsuki

「ビビッと来る子に出会えて、良かったね」
「ええ、本当に」
 僕はブースの店主さんにお会計をお願いする。梱包(こんぽう)して貰っている間、賑(にぎ)やかな音楽が階段の方から聞こえて来た。
「えっ、何……?」
 振り向いてみると、二階の第二会場に通じる広い階段をステージにして、不思議な雰囲気のマスコットキャラが踊っていた。
「あれが、このイベントのマスコットキャラ……」
 白くて細長いボディは、一瞬だけ大根かと思ってしまったけれど、どうやら水晶らしい。よく見れば、根本はちゃんと六角柱になっていて、条線までついていた。恐竜のような尻尾(しっぽ)が生えていて、三葉虫(さんようちゅう)のような靴を履いている。ズボンには、大きな宝石が付いていた。
 マスコットキャラクターは軽快な動きで踊っている。それを取り巻く人々の中に、律さんの姿があった。携帯端末を構えているので、マスコットキャラクターの写真でも撮っているのだろうか。
「あっ、あんなところに」と楠田さんもその姿を見つけたようだ。
「行きましょうか」
「そうだね」
 お会計を済ませた僕は、瑪瑙化した巻貝を鞄(かばん)の中に大事にしまい、楠田さんと一緒に律さんの元へと向かったのであった。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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