よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

第十話 喪に服す電気石〈前〉

蒼月海里Kairi Aotsuki

 鉱物にはさまざまな種類がある。
 主に、構成している原子によって分類されることが多いけれど、何も知らない人が見た目だけで分類するならば、まずは透明感がある石と透明感がない石だろうか。
 透明感がない石にも魅力はあるけれど、透明感がある石は人を惹(ひ)きつけやすく、鉱物のことを知らない人も容易に魅了することが出来る。
 その筆頭として、蛍石(ほたるいし)がある。
 紫や緑、ピンクや青や黄色と、カラーバリエーションが豊富な蛍石は、多くの人を魅了し、鉱物の世界に誘(いざな)う。
 基本的な形は立方体だけど、細かな立方体が集まることで八面体や球体になることもある。
 また、劈開(へきかい)という割れ易(やす)い方向を利用して、八面体に加工した蛍石も市場に流通しており、パステルカラーの紫や緑の八面体の蛍石は、フッ化カルシウムの塊とは思えないほどの可愛(かわい)らしさを持っていた。
「蛍石は最っ高。でも、トルマリンはもっとヤバいのよ」
 昼休みのことだった。僕のクラスメイトである山下(やました)さんは、友人の女子生徒を集めて鉱物の話をしていた。
 少し派手で大人びた山下さんは、お小遣いでコツコツと蛍石を集めている蛍石コレクターだ。
 しかし、どうやら最近、別の鉱物にも興味を持っているらしい。
「トルマリンって、宝石だっけ。聞いたことあるけど」
 女子の一人が首を傾(かし)げる。山下さんは、「そうそう」と頷(うなず)いた。
「指輪とかペンダントにするためにカットされてる石だけど、原石もヤバいのよ。っていうか、原石がヤバい」
 山下さんは、携帯端末をポケットから取り出すと、ネットで何やら検索し、仲間の女子に見せる。
 すると、仲間の女子もまた、「ヤバっ」と声をあげた。
 一体、何がヤバいんだろう。
 僕が気になって耳を傾けていると、山下さんは唐突にこちらを振り向いた。
「えっ」
 目がばっちり合ってしまったので、つい、そらしてしまう。
 だけど、山下さんは大股でこちらに急接近して、携帯端末の画面を僕に押し付けてきた。
「ほら、草薙(くさなぎ)君も見て!」
「は、はい……」
 山下さんの迫力に圧(お)されながら、僕は携帯端末の画面を見やる。
 そこには、色とりどりのトルマリンの写真が、ずらりと並んでいた。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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