よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

第十四話 黄金の国〈後〉

蒼月海里Kairi Aotsuki

 最寄りの駅に着いた僕達は、行けるところまでタクシーで行き、後は、徒歩で産地へと向かった。
 多摩川(たまがわ)の源流というだけあって、なかなかの山道が僕達の前に立ちはだかる。途中で苔(こけ)むした岩場もあり、律(りつ)さんと楠田(くすだ)さんの手を借りながら、慎重に進んだ。
 道は険しかったけれど、自然の空気は心地よかった。
 水が流れる音と、木々の葉が風にそよぐ音と、時折耳元をかすめる虫の羽音を聞いていると、自分も自然の一部になったような気がした。
「着いた……!」
 詳細な地形が記された地図を見ていた律さんは、安心したように声をあげる。
 僕達の目の前には、ゴロゴロと転がる大きな岩と、その間を縫うように流れる川があった。
 岩の一つ一つは、成人男性である律さんがしゃがんだらすっかり見えなくなりそうなくらいの大きさで、その間を流れる川は、僕でもジャンプすれば飛び越えられるほどに狭い。そして、源流なので、水がとても澄んでいた。
「ここに砂金が?」
「そう。近くに金鉱脈があると、浸食作用で削られた砂金が流れて来るんだ。ここが、ちょうど、そういうスポットっていうわけ」
 律さんはウインクをしながら、背負っていたリュックサックを岩場に置く。
 その大きなリュックサックから、顔がすっぽりと隠れてしまいそうなほどのお皿を取り出した。
「はい、これ」
「あっ、有り難うございます!」
 僕は律さんからお皿を受け取る。
 そのお皿はパンニング皿といって、砂金とそうでないものを分けるパンニングという作業に使うのだという。楠田さんも、リュックサックを下ろして、自分のパンニング皿を取り出していた。
「金っていうのは、重いんだ」
 律さんも自分のパンニング皿を片手に、僕に説明をしてくれる。
「鉱物によって、比重に違いがあるのは知ってるよね」
「はい。同じ大きさの鉱物でも、比重が違えば重さが違うんですよね」
「お見事、その通り!」
 律さんは拍手をしてくれた。「そんな、大袈裟(おおげさ)な……」と僕は照れくささのあまり、小声になってしまう。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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