よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

番外編エッセイ②

蒼月海里Kairi Aotsuki

 ミュンヘン市街地まで行くリムジンバスを予約していたので、得意顔でQRコードつきの予約券を渡したのですが、「これはうちのじゃないよ」と英語で言われて、パニックに。どうやら航空券を渡してしまったらしく、「本当だ!?」と日本語で悲鳴をあげながら必死でバスの予約券を探す私。
「大丈夫」「問題無いから」「ゆっくり探して」的なことを英語でやんわりと言ってくれるバスの運転手さん。早速、現地人の優しさに涙しそうになりました……。
 その後、何とか無事にホテルに到着。
 ボーイさんなどはいない小ぢんまりとしたホテルでしたが、部屋の中は可愛らしい装飾が満載で、まるで、メルヘンの世界にいるよう。


ホテルにあった妙に陽気な絵画

 そんな中、ルートヴィヒ二世の肖像画を発見。あの、シンデレラ城のモデルになったと言われるノイシュバンシュタイン城を建設した王様です。
 ミュンヘンはバイエルン州なので、かつては彼の領地でした。生前は色々あったものの、今は地元の人に愛されていると聞いたのですが、まさかこんなところでお会い出来るとは。
 その後、エアコンが存在せずオイルヒーターで暖を取っていることに驚いたり、便座が石のように硬くて冷たいことに涙したりしましたが、時差ボケをさほど感じることなく、翌朝は元気にプレッツェルを食べておりました。

 そして、いざミュンヘンミネラルショー。
 やたら便利な地下鉄に揺られて約三十分。会場である巨大な展示ホールに到着しました。日本で言うと、東京ビッグサイトや幕張メッセのような場所です。
 そんな会場に入ると、日本のショーとは全く違うと瞬時に悟りました。
 まず、規模が明らかに違う。並んでいる品々も違う。日本では見ることが出来ないほど珍しい鉱物やクオリティが高い鉱物が、あちらこちらで飾られていました。



ミュンヘンミネラルショーの様子

 しかし、それらをつぶさに見ている余裕は、その時の私にありませんでした。私には、目的のお店があったのです。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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