よみもの・連載

水晶庭園の少年たち

番外編エッセイ③

蒼月海里Kairi Aotsuki

 ミュンヘンミネラルショーの会場は、世界中の鉱山が寄り集まっているかのようでした。
 アルプス山脈の谷間で煙水晶(スモーキークォーツ)を採集して来た人や、シチリア島から青い蛍石(フローライト)を見つけて来た人などもブースを出していて、地図を拡げて採集場所を教えてくれたりとか、現地の写真を見せてくれたりもしました。


アルプスの煙水晶

アルプスの蛍石

 博物館に飾られるような、大きくて美しくて立派な石もありましたし、私が全く知らない石も沢山ありました。
 日本には、そのうちのほんのわずかな石しか輸入されません。
 やはり、鉱物業者さんも商売なので、需要の少ない石を仕入れることは出来ないのです。
 私はその、ふるいに掛けられる前の石達を目にして、世の中には、自分が思った以上に美しかったり、面白かったりする鉱物が溢(あふ)れているのだなと感心しました。

 では、日本だとミュンヘンで称賛されるような立派な鉱物は出ないのでしょうか?
 いいえ。企画展示に並ぶ博物館クラスの鉱物の中に、市之川(いちのかわ)鉱山の輝安鉱(きあんこう)が展示されておりました。
 市之川鉱山とは、主にアンチモンを採掘していた国内最大級の輝安鉱鉱山でした。この鉱山はすでに閉山されておりますが、ここの輝安鉱はとても美しく、日本が世界に誇る石の一つとなっております。

プロフィール

蒼月海里(あおつき・かいり) 1983年宮城県生まれ。日本大学理工学部卒業。
2014年、文庫書き下ろしの『幽落町おばけ駄菓子屋』でデビュー。同シリーズのほか「華舞鬼町おばけ写真館」「幻想古書店で珈琲を」シリーズなどを次々と刊行。他の著書に『水上博物館アケローンの夜』など。

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