よみもの・連載

バンチョ高校クイズ研

第五話

蓮見恭子Kyoko Hasumi

 その日、慎太郎(しんたろう)は運営を手伝う為に、午前七時に会場入りした。
 会場は仙台市内にあるスポーツセンターで、あちらこちらで「やあ、やあ」と挨拶が交わされている。クイズの世界は狭い。顔見知りだらけだ。
 今日の企画を主催するのはG学院クイズ研究会で、新入生限定の高校生クイズ大会となっていた。
 主催のG学院の有志大学生達は何日も前から問題や小道具を準備したり、進行の段取りを考えるなどしており、当日は会場設営の他にも受付や司会、問読み、採点や参加者の誘導など、やる事は幾らでもあるのだ。
 運営側の人数は十分ではなかったらしく、慎太郎も加勢を頼まれていた。部員達の引率は山田(やまだ)に頼んであった。
 受付でパワーポイントの動作を確認していると、「せーんせっ」と声がかかった。
 振り返るなり「げっ」と変な声を出していた。
 ポロシャツにショートパンツという若作りの天見(あまみ)が、嬉(うれ)しそうに手を振っていた。
 その後ろに早乙女(さおとめ)、百地(ももち)、大納言(だいなごん)の三人。
「な、な、何ですか? 何故、天見先生が……」
 説明を求めるように後ろの三人を見たが、げんなりした表情をするだけで、無言だ。
「それがですねぇ、山田先生、御親戚に不幸があったらしく、今朝になって連絡があったんですよぉ。代わりに、引率してもらえませんかって。そういう訳なんですよ。シンちゃん」
 そして、「うふっ」と小首を傾(かし)げて見せた。
「え、シンちゃん?」
「そういう関係だったの?」
 百地と大納言が顔を見合わせ、天見と慎太郎を交互に見た。
「な、馴(な)れ馴れしく呼ばないで下さいっ!」
「あら? 女子生徒は皆、シンちゃんって呼んでますよ。それより、私は何をすればいいんですか?」
 慎太郎は咳払(せきばら)いをした。
「今日、私は運営で忙しいんですから、いちいち聞かないで下さい。そこに進行表が貼って……」
 その時、入口に見覚えのある顔が現れる。向こうもすぐに慎太郎に気付いた。
「鈴木(すずき)先生!」
 頬にニキビをこさえた男子生徒が駆け寄ってくる。半袖のシャツにグレーのベストは、この季節の第二高校の制服だ。

プロフィール

蓮見恭子(はすみ・きょうこ) 1965年大阪府生まれ。2010年『女騎手』で第30回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞。
ミステリーにとどまらずスポーツもの、青春小説や人間ドラマにまで作風を広げ活躍中。
著書に「国際犯罪捜査官・蛭川タニア」シリーズ、『襷を、君に』『襷を我が手に』『シマイチ古道具商―春夏冬(あきない)人情ものがたり―』『はじまりの家』 『MGCマラソンサバイバル』などがある。

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