よみもの・連載

トナリの怪談

第二回 怪談一人語り:毎日見る夢

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

 三日目の夜、僕は相変わらず夕焼けの中を見知らぬ家に帰ります。見知らぬ女の子が出迎え、僕に向かって笑顔を向けます。
「ただいまー」
「お帰りー。今日は会社、どうだった?」
「いつも通りだったよ」

 四日目。
「ただいまー」
「お帰りー。今日は会社、どうだった?」
「いつも通りだったよ」
「そっかー。じゃ、お風呂にする?」
「うん、入ろうかな」

 五日目。
「ただいまー」
「お帰りー。今日は会社、どうだった?」
「いつも通りだったよ」
「そっかー。じゃ、お風呂にする?」
「うん、入ろうかな。……そうだ、今日のご飯、何?」
「ハンバーグ!」

 ……一日ごとに、少しずつ会話をする時間が長くなっていきます。二言、三言会話をするだけだったのがちゃんとしたやりとりになっていく。
 毎日、毎日、少しずつ長くなる夢。
 見知らぬ家に帰り、全く知らない女の子と、恋人か夫婦のようなやりとりを交わし、笑い、食事をし……。
 そんな時間がぐんぐん長くなっていって、僕はもう、自分が起きているのか、寝ているのかがわからなくなってきました。
 起きている時は自分の生活があるし、眠ってしまえばその「奇妙な夢」の中で、妙にリアルな生活が始まってしまう。
 昼も夜もずっと動き回っていて、全然疲れが取れなくて、常にぼんやりしていて。
 今は何日? 何時? 昼? 夜?
 今、僕が見ているのは現実の光景? それとも夢の中の出来事?
 聞こえている音は現実? 夢? 匂いは? 痛みは?
 もう何が何だかわかりません。
 日付の感覚も曜日の感覚も曖昧になって……それでもゼミやバイトがある日は這(は)うようにして外に出ました。
 多分、僕は必死だったのでしょう。このまま家にいて、寝るか起きるか、だけの生活を送っていたら、いつかこの現実と夢の世界が逆転して、向こうが僕の人生になってしまうような……そんな言い知れない恐怖が頭の片隅で渦巻いていて、僕はなんとかしてそれを回避しようとしていました。
 そんな生活がしばらく続きました。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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