よみもの・連載

トナリの怪談

第二回 怪談一人語り:毎日見る夢

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

 そして、その奇妙な夢を見始めてから一ヶ月ほどたった頃、あることが起きたんです。
 その日はゼミがある日でした。
 僕は寝不足でふらふらになりながらも、気力を振り絞って大学に向かいました。
 昼間の刺すような日差しはまるで木漏れ日のように曖昧で、すれ違う生徒たちの動きもどこかスローモーションのようにゆっくり見えて……。
 そんな曖昧な感覚の中で、ぼんやりしながらゼミのある講堂に入り、ぼんやりしたまま講義を受けます。
 教授の声は何枚もの薄い布越しに聞こえてくるように聞き取りづらくて、まるで水の中から地上の声を聞いているような感覚でした。
 そんな時、ゼミの同級生が声をかけてきたんです。
「ハヤトモくん」
「……うん?」
 どうやら僕がぼんやりしている間に、講義は終わっていたようでした。
 講堂にはもうほとんど誰も残っていなくて、しんと静まりかえっていました。
 そんな中、同級生は僕に用事があるようでした。
 彼女はやつれた僕のことを少し心配そうに見たものの、それには特に触れませんでした。気軽に触れられないほど、ひどい顔をしていたのかもしれません。
 迷うそぶりを見せたものの、結局彼女は、あのね、と言葉を続けました。
「実は前々から、ハヤトモくんに紹介したい女の子がいて」
「紹、介?」
「でも、ちょっとその子、自分からは話しかける勇気がないって言ってて」
「……ああ」
 彼女が、紹介したい女の子。
 でもその同級生の様子から、多分これは彼女が紹介したいんじゃなくて、その「誰か」が紹介してほしいと彼女に頼んだのかな、という印象を受けました。
 自分からガツガツとアピールしていると思われたくない「友人」の奥ゆかしさを察して、僕の同級生は「私が紹介したい」と言ったような……そんな感じがしたんです。
「今日、連れてきてるから、よかったら紹介してもいい?」
 そう言われて、僕はこんな時だというのに、ちょっと舞い上がってしまいました。
 ……僕に興味を持ってくれた子が、会いたがってくれている。
 そんなことを言われたら、やっぱりかなりうれしいものです。一瞬、不眠症気味でふらふらなことも忘れて、僕は思わずうなずきました。
「ああ、いいよ、いいよ。もちろん。紹介して、お願い」
「あはは、よかった。……じゃあ、おいで〜」
 ゼミの同級生が後ろを向き、誰かに手招きをしました。
 開けっぱなしの講堂の出入り口に細い指がかかりました。
「……?」
 アレ? と一瞬僕は奇妙な感覚に陥りました。
 白くて、細くて、小さな指。全く見覚えがないのに、なぜか僕は知っているような……。
「……こんにちは」
 続けて、ひょこっと顔を見せた彼女を見た瞬間、僕は思わず声を上げそうになりました。
 ……あの子です。
 この一ヶ月、毎晩毎晩、僕の夢に出てくる女の子。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

Back number