よみもの・連載

トナリの怪談

第二回 怪談一人語り:毎日見る夢

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

 いや、夢に出てくる、なんて軽い話じゃない。夢の中で、僕と生活している女の子です。
 さらさらの黒髪も、大きな丸眼鏡も白い肌も、全部が全部、夢のとおりでした。
 とはいえ、僕は驚いたものの、恐怖を感じたりはしませんでした。
 普通の人より少し霊感があったから、でしょうか。人が人に向ける「想い」を勝手に受信してしまうようなことは今までにも何度かありました。
 ですので、この時も、今、講堂に来てくれた子が密かに僕に好意を抱いてくれていて、僕が勝手にその思いをキャッチしてしまったのかな、なんて思ったわけです。
 秘めていた思いを勝手に相手に知られていたら、その子はとても恥ずかしいかもしれません。
 ……これは黙っていよう。
 そう考えて、僕は素知らぬふりで、歩いてくる彼女を待ちました。
「……こんにちは」
 僕の前に立って、その子は小さな声で言いました。
 少し気恥ずかしそうに、それでも精一杯勇気を振り絞ったような声。
 この一ヶ月、毎日夢で聞いていたのと同じ声でした。
 でもそんなことはおくびにも出さず、僕はちゃんと初対面の相手として、彼女にきちんと向き合いました。
「こんにちは。同じ授業を取ったことは、ないですよね?」
「……は、はい、それは一つも。あの、えっと私」
「あ……あはは、やっぱり緊張、しますよね。僕も……えっと、あ、そうだ。まず挨拶しなきゃ。初めまして。はやともって言います」
 お互いしどろもどろになりながら、僕はまだ自分が名乗っていないことを思い出して、慌てて言いました。
 まあ、こっちに興味を持ってくれていたなら、名前くらいは知っているかもしれませんが、そこは礼儀として、やっぱり。
 ……でもその時、女の子が小さく肩をふるわせはじめたんです。
「ふふ」
「……どうしたの?」
 彼女は肩をふるわせて笑っていました。
 なんだかとてもおかしそうに、くすくすと。
 そしておもむろに、ガバッと顔を上げて、僕の目をじっと見つめました。

「だって、『初めまして』じゃないはずですよね」

「……っ!!」
 その瞬間、さすがに僕も、うわって思いました。
 ――この子はあの夢を知っている。
 そして知っていて、現実世界で僕にコンタクトを取ってきた。
 ああ、コレはやばい。よくないやつだ。何が何だかよくわからないけど、とにかくちょっとまずいやつだ。
 そんな風に焦りと恐怖がぶわっと一瞬で頭の中を駆け巡りました。
 でも、感覚的に「やばい」ことがわかっても、僕にはどうすることもできません。僕は人よりも少し「そういうもの」を感じるだけで、除霊やらお祓(はら)いやら、そういった類のことは何もできないのですから。
「ごめん。今日はバイトだから、えっとこの後ちょっと空いてないんだけど。あ、また今度ご飯とか行こう」
 しどろもどろにそんなことを言って、とにかく僕は逃げるようにその場を後にしました。
 その子は怒るでもなく、悲しむでもなく、「はい」と言うだけで、僕を見送ってくれました。
 でもやっぱり、その日の夜も彼女の夢を見たんです。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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