よみもの・連載

トナリの怪談

第二回 怪談一人語り:毎日見る夢

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

「ただいまー」
「お帰りー」
 夢の中で、僕は彼女の待つ家に帰ります。彼女は僕を出迎えます。
 夢の中で僕は彼女と一緒に暮らしていることに何の違和感も持っていなくて、当たり前のように会話をしていて。
 でもそれは僕というより、なんだか僕の形をした、人形のようなものでした。
 僕の意思とは無関係に、僕は笑い、動き、彼女と会話をするのです。
「このハンバーグ、すごくおいしい」
「よかった。いっぱい練習したんだ。たくさん食べてね」
「ありがとう。……あ、手が止まってるよ。早く食べないと」
「君が食べてるところ、見てるのが好きなの」
「はは、なに、それ」
「ふふふ、だっておいしそうに食べてくれるから。大好き」
「俺も」
 微笑む「彼女」に、僕ははにかんだように返します。俺、という親しい友人やそれ以上の人と話す時にしか使わない一人称を使い、彼女への好意を口にします。
 ……知らないのに。
 彼女のことなんて、何一つ。
 全然、さっぱり、まるで知らないはずなのに。
 
 さすがに僕も、これはもう無理だと思いました。
 翌週、ゼミのある日に僕は「彼女」を紹介してくれた同級生を引き留め、正直に打ち明けることにしました。
「ごめん、実は俺、一ヶ月以上、こういう夢を見続けてて」
 信じてもらえるかはわかりませんでしたが、僕としてはもう必死でした。
「いや、俺の勘違いだとは思うんだけど、なんかこう……ちょっと限界で。変なことを聞くけど、あの子のことで何か、そういう噂(うわさ)とか……聞いてない、よね?」
「ごめん!」
「……え?」
 突然頭を下げられ、僕はきょとんとしました。
 ゼミの同級生はものすごく申し訳なさそうに、それでいて困惑した顔をしていました。話すかどうか迷ったようでしたが、やがて彼女は言いにくそうに、実は、と切り出してくれました。
「あの子、結構かわいいでしょ? 当然、前にも付き合っている人がいて……。この学校でも一人、付き合い始めた彼氏がいたの」
「そうだったんだ」
「彼の方からあの子に告白して、付き合いだして、最初はすごく仲がよかったの。あの子、尽くすタイプだから、彼氏の家に行って、洗濯とか料理とかもして、半同棲みたいになってたな。彼氏の方も最初は喜んでて、私と会ってものろけてばっかり。……でも、半年くらいして、彼がちょっと変なことを言い出して」
「変なこと?」
「夢を見るんだ、って」
「…………」
 彼女は困ったような、少し気味が悪いような複雑な顔をしながら、自分の二の腕をさすりました。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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