よみもの・連載

トナリの怪談

第二回 怪談一人語り:毎日見る夢

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

「あの子が四六時中べったりしてくるのが少しうっとうしく感じるようになってきて、細かい喧嘩(けんか)や言い争いが増えるようになった頃だったかな。『夜はちゃんと家に帰って、昼間に会おう』って言ったんだって。その時は彼女も大人しく、『わかった』ってうなずいたらしいんだけど、それから毎日、あの子が夢に出てくるようになったんだって」
「それって……」
「別に変な夢じゃないって言ってた。ごくごく普通の日常の夢。……でも、夢の中の自分がおかしいんだって。あの子の作った料理を喜んで食べて、あの子が洗濯して、たたんでくれたパジャマを着て、いつもありがとう、愛してるよって言いながら髪を撫(な)でる、とか……。そういうこと、誰が相手でも一度もしたことないのに、夢の中でその彼氏は毎日、そういうことをするんだって。なんだか自分が操り人形になったみたいだって怯(おび)えてた。毎日、その夢ばっかり見て、寝た気がしないんだって」
「…………」
「確かにその頃の彼、目の下にクマがすごかった。でも私は……なんて言うか、申し訳ないんだけど、あり得ないなって思っちゃって。あの子と別れたいから、そういう不気味な話をでっち上げて、あの子の評判を落とそうとしてるように感じたんだよね。それで、別れるなら勝手にすればいいと思って、彼氏の味方はしなかった。実際、その二人はそれから少しして別れたからまあ普通に性格の不一致で、よくあることだと思ってたんだけど……」
「俺で、二人目」
「うん」
 同級生は青ざめた顔でうなずき、少し考え込んでいたものの、やがて何かを決意したように重いため息をつきました。
「ごめん、わかった。何をやってるか、私にはわからないけど、やめときなって言っとく。それ、いいことじゃないと思うから」
「ありがとう」
 彼女が帰っていくのを見送りながら、僕はホッと息をつきました。
 ……それ以来、その子の夢は見ていません。
 まるで「同じ夢を見続けていた一ヶ月」そのものが夢だったように、一度も見なくなりました。
 元々大学に行くこと自体が少なかったこともあり、その子自身とも会っていません。
 結局アレは何だったのか、彼女が何をしていたのか、それとも何もしていなかったのか……。彼女とは「初めまして」の挨拶をしたきり、話していないので、事の真相も謎のままです。
 ただ、その子は間違いなく普通の人間で、普通に大学に通い、恋人を作ったり、友人と遊んだりする女の子でした。
 噂では今、東京都内のどこかの会社に就職し、働いているとか。

 あなたの職場にいる女の子……もしかしたら、その子かもしれませんね。


―― 了 ――

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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