よみもの・連載

トナリの怪談

第三回 〜カーナビ〜

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

 あなたは車を運転しますか?
 運転する方なら今や、大抵の方がお持ちのカーナビ……便利ですよね。
 目的地を入力すれば、最短距離を指示してくれるだけではなく、渋滞情報をキャッチして迂回(うかい)ルートを提示してくれたり、地図情報を自動で更新してくれたり。
 ドライバーはストレスを感じることなく、最適なルートを通って目的地に着くことができます。
 ですがこのカーナビに、絶対に言わないとされている一言が登録されていることはご存じでしょうか。
 ――バックしてください。
 これです。
 なぜ? と思われた方も多いと思います。車の構造上、後ろに下がることはできて当然なのに。
 ですが、ほら、先ほどお話ししたようにカーナビは渋滞情報や最新地図を取り入れて、ドライバーを目的地に運んでくれます。道を間違えてもそこからの最善のルートを教えてくれますから、バックする必要がそもそもない。そういう理由かもしれません。
 でもこのカーナビが、ある一定の条件を満たすと、バックするように促してくる。
 今日はそんなお話をさせていただきます。
 僕の知人が昔、体験した不気味な出来事……どうか、あなたはこんな目にあいませんように。

 * *  *

 すがすがしい快晴の日だった。
 少ししっとりとした秋の空気が太陽で熱され、心地よい風になって吹いてくる。遠くのほうまで続く菜園では夏野菜の収穫が終わり、青々とした葉がそよそよと風に合わせて揺れていた。
 高層ビルはもとより、居酒屋や学校などもない。遠くのほうにポツポツと民家が見えるだけの穏やかな田園風景だ。
 車を運転していた伊庭(いば)は少しスピードを落とし、窓を開けて外の空気を入れた。
「気持ちいいな。来て正解だ」
「ほらほらほらほらぁ! だーかーらー俺は言ったでしょ! 絶対来るべきだって!」
「阿内(あない)、うるせえ」
 少しつり目で明るい髪色をした友人が助手席で騒ぐ。
 伊庭は顔をしかめ、ドリンクホルダーに置いてあったペットボトルを投げつけた。ボトルは阿内の頭に当たり、助手席側の窓の外に飛んでいく。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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