よみもの・連載

トナリの怪談

第三回 〜カーナビ〜

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

 *  *  *

 ……いかがだったでしょうか。
 知人の話はこれで終わりです。
 彼は僕にも、詳しいことは何も話してくれませんでした。
 酒の席で「学生時代に友人が神隠しにあったことがある」と話し出したのですが、他の友人が「はやともはそういうの、視(み)えるんだぜ」と言った途端、そそくさと逃げるように他の席に移動してしまいました。
 それ以来、彼は僕のことを避けるようになりました。むろん僕は相談されても解決できるような力はないのですが、少し不思議に思うんです。
 自分の大切な友人が神隠しにあって消えてしまったとしたら……そしてその後、霊感がある人物に会ったとしたら……皆さんだったらどうするでしょうか。
 アレは何だったのか。友人はどうなってしまったのか。戻ってくる可能性はあるのか。助ける方法はないのか……。
 普通、そういうことを聞きたくなるものではないでしょうか?
 でも彼は僕を避けるようになりました。僕にはなんとなくそれが、真相を暴かれるのを恐れているように見えたんです。
 もしかしたら彼らは旅行中に友人と仲違(なかたが)いし、うっかり友人の命を奪ってしまったのかもしれません。それを知られたくなくて、神隠しだ、などと嘘をついたのかも。
 でもその場合、罪を隠し通すのはとても難しいとも思うんです。よほど周到に計画を練らない限り、証拠を何も残さず、完全犯罪を企てるのは至難の業でしょう。
 そんな僕に、文化人類学に詳しい先輩がこんな話をしてくれました。
 この国は先進国の中では、かなり近代まで食人文化が地方に残っていたようです。昭和の半ばまで人間の内臓が万病に効くという伝承が各地に残っており、土葬されていた墓が荒らされ、政府が手を焼いていた、なんて記事も残っているくらいです。
 ――ゆえに、もしかするとその文化が今もまだ残っている村があるのかもしれません。
 その村の場所はある程度特定されていて、そこを通らざるを得ない場合のみ、カーナビが「バックしてください」と警告する仕組みになっているのかも。
 ……知人たちは好奇心に負けて、その村に足を踏み入れてしまった。そして村の住人に囲まれ、「一人置いていかないと先へは進ませない」などと言われたのだとしたら、どうでしょう?
 誰か一人と言われた時、もしかしたら彼らは自分たちの中で一番「弱い」個体を差し出すことに決めたのかもしれません。弱々しくて、自己主張をせず、従順で扱いやすい存在を。
 ずっと友人として仲良くやっていたのに、究極の選択を迫られた時、彼らは弱肉強食の世界で生きる「獣」になったのかも。
 だから彼らは友人が消えても騒がず、警察に届けも出さなかった。それでいてオカルト的な「不思議な出来事」として納得することもできず、罪の意識を抱き続けている、としたら……。
 答えのない話ではありますが、これが僕の推測です。
 もしかすると日本にはまだいくつか、絶対に立ち寄ってはいけない村が残っているのかもしれません。それらに対し、先人たちが残した警告のメッセージ……カーナビの指示には、きちんと従ったほうが安全かもしれませんね。


―― 了 ――

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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