よみもの・連載

トナリの怪談

第四回 いい人

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

 あなたのそばに「いい人」はいますか?
 誰にでも好かれるような人。誰からも信頼される人。いつもたくさんの友人に囲まれていて、いつも楽しそうに笑っている人。
 不機嫌な顔をせず、他人に親切な人は自然と周りから信頼され、それがまた他の人を惹きつける。……そういうものなのかもしれませんね。
 今回は僕の古い友人が体験した、そんな「いい人」の話をさせてもらいます。

  *  *  *

 生き霊、というのはどこにでもいる。
 茅野(かやの)にとって、それは呼吸するのと同じくらい当たり前のことだった。
 フィクションの世界ではたいてい恋人を呪ったり、恋敵を呪ったりしているが、そんなおどろおどろしいモノは滅多にいない。
 茅野の視界に映る生き霊は「思いの強さ」そのものと言ってもいい。
 他人に対する「好意的な思い」が強いと、生き霊は温かな光の粒となって現れる。
 無数の光が集まって本体に似た形を作るが、それはさらさらと流れ、また形を作り、また流れ……そして好感を持つ人の周りにそっと寄り添うのだ。
 人気のあるアイドルや俳優、スポーツ選手などは圧巻だ。人によっては数十人……いや、数百人単位の生き霊が憑(つ)いている。あまりにも多いと、それぞれの顔を判別することは不可能で、多くの人を惹きつけている有名人の魅力に感嘆するばかりだ。
(でも)
 売り出し中のアイドルとなると、ファンも少ない。場合によっては、生き霊の顔も正確に判別できてしまう羽目になり……、
「おわっ、茅野、起きろ起きろ!」
「へ……うわっ」
 慌てたような声が近くで聞こえ、茅野ははっと我に返った。目の前で火にかけていたフライパンから焦げ臭い煙が上がっている。
「やっべ!」
 慌てて火を止めたので大惨事は免れたが、匂いは「香ばしい」の範疇(はんちゅう)には収まりそうにない。
「す、すみません」
「どうした? ほんとに目を開けたまま寝てたのか?」
 ぼんやりしていた茅野にいち早く気づき、声をかけてくれた男性が苦笑した。
 ざっくりとした白シャツに黒いズボン。頭にキノコ模様の帽子をかぶったペンギンがプリントされたエプロンを身につけている。
 このパスタ店、「キノペンパスタ」のマスコットキャラだ。
 同じエプロンを今、茅野も身につけている。高校時代、友人と毎週のように通ったパスタ店の味が忘れられず、ついに大学生になった時、ここでバイトすることに決めた。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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