よみもの・連載

トナリの怪談

第五回 〜いつ死ぬの?〜

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

「……っ!?」
 僕は思わずぎょっとしてしまいました。空耳だと思いたかったのですが、確認する術(すべ)はありません。
 霊感のない友人には当然その声も聞こえておらず、ただただうなだれながら泣いていました。
『ねえ、いつ死ぬの?』
 再び彼女が言いました。微笑(ほほえ)みながら、彼のことだけを見つめたままで。
 穏やかで、優しくて、少し茶目っ気のある口調でした。まるで普段のデートで「ねえ、今日はどこに行くの?」と聞くような……。
 僕は彼女のことが気になってたまりませんでしたが、露骨に反応することもためらわれました。
 下手に騒いで、友人が不審に思ってしまってもよくありません。結局僕は彼女なんて見えていない態(てい)で、ただ友人を慰めることにしました。
「なあ、元気出せよ」
「うん、でも……」
「いつまでもへこんでたら、みんな心配するだろ。みんなって言うか……」
「あいつも心配するかな」
「あ、当たり前だろ……」
 そんなやりとりの間にも、亡くなった彼女がベッドの上でずっと言っているんです。「ねえ、いつ死ぬの?」、「いつ死ぬの?」って。
 僕はもう意味がわからなくて、ただ混乱するばかりでした。
 この時、もし彼女が憎らしげな顔をしていたら、まだ理解はできたんです。殺意に満ちた目で彼に対して呪いの言葉を吐いていたのなら、「ああ、外から見ていた僕たちにはわからなかったけど、二人にも色々あったんだろうな」なんて納得したかもしれません。
 でも彼女はとても楽しそうに微笑んでいて、僕の友人が好きで好きでたまらないのが伝わってきました。
 結局、僕はこの時、友人に彼女のことを言えないまま、少ししてから帰途につきました。
 それでもやっぱり彼は大事な友人です。どうしても気になってしまって数日後、僕はまた彼の家に行きました。
「いらっしゃい」
 その数日の間にも、いろんな人が彼のもとを訪ねていたようでした。
 彼はもう泣いてはおらず、顔色も数日前よりは少しよくなっているようでした。ぎこちないものの笑顔も戻ってきていたので、僕もホッとしたものです。
 でも部屋に招かれた瞬間、僕は総毛立ちました。
 ベッドの上には彼女が相変わらず座っていて……でも前回とは違って、少しも笑っていませんでした。
 イライラしているような、すごく不満を覚えているような……とにかくゾッとするような目で彼だけを凝視して、「いつ死ぬの?」、「いつ死ぬの?」、「ねえ、いつ死ぬの?」ってずっと言ってるんです。
 こんなこと、友人に伝えられるはずがありません。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

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