よみもの・連載

トナリの怪談

第五回 〜いつ死ぬの?〜

シークエンスはやともSequence Hayatomo
構成/樹島千草

 どうしたらいいんだ……と途方に暮れつつ、僕はとても気になってしまいました。……なんで彼女はこんなことを言うんだろうって。
「なあ」
 僕は友人に聞いてみました。
「彼女、病気だったんだよな?」
「ああ、だいぶ前からな。しばらく通院して、薬飲んでたらよくなるかもって話だったから、一緒に暮らしてた。でも半年くらい前、いよいよそれじゃダメだってことになって、入院してさ」
「お前、毎日のようにお見舞いに行ってたもんな」
「そりゃ大好きだったからな。……いろんな話をしたなあ。退院したらどこに行こうとか、何を食べようとか」
 懐かしそうに微笑む彼と、ベッドの上ですごい形相をしている彼女を見比べながら、僕にはある考えが浮かびました。
「なあ……もしかしてお前さ。彼女が亡くなる前に、『お前が死んだら、俺も死ぬよ』みたいなこと言った?」
 恐る恐る尋ねた僕に、彼は少し考えてから、こくんとうなずきました。
「うん。……いなくなっちゃうのが寂しくて、寂しくて……そういう風に一回言った」
 しゅんと肩を落とし、彼は切なそうに窓の外を見ました。
「でも本当に、こんなにすぐ死んじゃうとは思わなかったんだよ」
 ……ああ、そうか。
 僕はやっと色々とわかった気がして、何も言えなくなってしまいました。
 彼女は亡くなってからも、その約束を覚えているんでしょう。だからニコニコ笑いながら、大好きな彼が自分のところに来てくれるのを楽しみに待っていたんです。
 いつ来てくれるのかな、今日かな、明日かな、ううん、今すぐかも。
 そんなことを考えながら、ベッドの上でその時を心待ちにして……。
「でも、いつまでもへこんでたら、あいつも心配して成仏できないよな」
 ですがその時、彼はふっと自嘲気味に笑いました。
「はやともたちもこうやって遊びに来てくれるし、俺も早く元気にならなきゃな。あいつの分まで、俺は頑張って生きないと」
 それは多分、世間一般的にはすごくいい言葉だったと思います。彼のご両親や友人たちも、そうやって前を向こうとする彼のことを頼もしいと思ったでしょう。
 でも僕には見えていました。
 彼の言葉を聞いて、鬼のような形相に変わった彼女の顔が。
『ねえっ、いつ死ぬの!?』
 ずっとベッドの上にいた彼女がいきなりバッと立ち上がりました。
『いつ死ぬの? ねえ、いつ死ぬの? いつ? ねえ、ずっと待ってる。早く死んでよ。ねえ、早く死んで!』
 彼女は一直線に彼に近づいて、思い切り彼の胸元あたりを押しました。
 いや、違います。かわいらしく叩(たた)いたわけではなく、彼女の右の拳が手首辺りまで、彼の身体の中に埋まったんです。

プロフィール

シークエンスはやとも 吉本所属のピン芸人。自称・心霊第七世代。
幼少期から沢山の心霊体験に遭遇し、それを面白く、時には怖く表現することを芸としている。
TVやYouTubeを軸に活躍中。

Youtubeチャンネル「シークエンスはやともチャンネル?1人で見えるもん。?」 https://www.youtube.com/channel/UCZnndFCPnK1EC2PERlGvwOA
Twitter:@HayaTaka78


構成/樹島千草(きじま・ちぐさ) 牡羊座A型。東京都出身。某大学文学部卒業。甘味とカフェオレと昼寝が好き。
著書に『咎人のシジル』、『虹色デイズ 映画ノベライズ』がある。
Twitterやってます。@chi_kijima1001

Back number