サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第15問!
人材は国家の礎です。優秀な人材をより多く集め、より多く育成することが国家の将来を築きます。海外留学はそのひとつの目安です。
2017年の段階で海外で学んでいる中国の留学生はおよそ93万人(在籍数)だった。このうち、2017年に中国から海外へ留学した学生の数は608,400人(渡航数)である。どちらの数も世界最多となっている。在籍数では2位はインド(33万人)、3位はドイツ(12万人)となっており、2位以下を大きく引き離していることがわかる。
中国の影響下にある一帯一路参加国の留学生数も合計すると、その圧倒的な規模から世界の高等教育を変容させるとまで言われている。
日本の状況を見ると、中国から大きく引き離されているだけではなく、隣国の韓国と比べても海外留学生の数は少ない。
海外で学んでいる日本の学生は約3万人で中国の31分の1だ。中国と日本の人口比は 2017年の時点で13.3億対1.3億なのでおよそ10分の1、人口を勘案しても3倍以上の開きがある。
隣国の韓国が海外に送り出した留学生の数は世界4位の10万人で日本の3倍以上だ。韓国の人口は約0.5億人なので人口当たりでは日本の8倍になる。また中国が受け入れている海外からの学生では韓国がもっとも多く、韓国の留学先としても中国がトップだ。なお、2020年の時点で韓国は一帯一路には参加していない。
一帯一路構想でも教育支援には力を入れている。教育支援を行う相手国の発展状況に合わせたプログラム(後開発国向けのSilk Road Education Assistance Programなど)、高等教育(Silk Road School、丝路学院)あるいは職業訓練(LubanWorkshops、魯班工坊)といった目的に合わせたプログラムなどが用意されている。中華人民共和国教育部によれば、その目的は3つである。
- 1.人的結びつきの強化(Promote Closer People-to-People Ties.)
- 2.一帯一路で必要となる能力の育成(Cultivate Supporting Talent.)
- 3.参加国との協力による教育水準の向上(Achieve Common Development.)
一帯一路参加国以外の各国の大学や教育機関との提携も進めており、英語検定試験IELTSで知られるイギリスのUK-China-BRI Country Education Partnership Initiativeを始めとして47の提携を結んでいる。
また、メディアやジャーナリストへのトレーニングを過去5年間に75カ国で行っており、中国から見た世界観の普及に努めている。
過去のクイズで世界のSNS利用者数、デジタル・シルクロード、教育について見てきたように、中国は全方位に渡って自国の優位性を確立、維持するための施策を次々と打っているのである。
出典
Global Flow of Tertiary-Level Students(ユネスコ)
http://uis.unesco.org/en/uis-student-flow#slideoutmenu
Brief report on Chinese overseas students and international students in China 2017(2018年3月31日、中華人民共和国教育部)
http://en.moe.gov.cn/documents/reports/201901/t20190115_367019.html
平成29年度外国人留学生在籍状況調査等について(2017年12月、独立行政法人日本学生支援機構JASSO)
https://www.jasso.go.jp/about/statistics/intl_student/data2017.html
Education Action Plan for the Belt and Road Initiative(2017年10月12日、中華人民共和国教育部)
https://eng.yidaiyilu.gov.cn/zchj/qwfb/30277.htm
2019 UK-China-BRI Countries Partnership Initiative: Open for applications
https://www.britishcouncil.cn/en/programmes/education/partnership-fund
Beijing’s Global Megaphone:The Expansion of Chinese Communist Party Media Influence since 2017(2020年1月、フリーダムハウス)
https://freedomhouse.org/report/special-report/2020/beijings-global-megaphone
- プロフィール
-
一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida
-
- 「民主主義を測定する指標とは?」
- 「透明性レポートとは?」
- 「最近注目されているファイブ・アイズとは?」
- 「ネットで時々話題になる「闇のグーグル」、SHODANとは?」
- 「2021年1月1日に日本でニュースに取り上げられた中国製のコロナワクチンの話題とは?」
- 「「自由で開かれたインド太平洋構想」の中核メンバーであるインドの現在の状況は?」
- 「民主主義国グループD10のメンバー国は?」
- 「イギリスが提唱している民主主義国のグループの名称は?」
- 「アメリカ大統領選でSNSを本格的に利用した最初の政治家は?」
- 「アメリカで最初に選挙でボットが使われたのはいつ?」
- 「アメリカ大統領選でトランプが配布したアプリの機能とは?」
- 「二重恐喝型ランサムウエアとは?」
- 「監視資本主義という言葉を最初に使った人は?」
- 「監視資本主義とは?」
- 「ネットで拡散しやすい発言とは?」
- 「エコーチェンバー現象とは?」
- 「AmazonやIBMが顔認証システムの提供をやめた理由は?」
- 「インドで使われている生体認証システムを提供している日本のメーカーは?」
- 「イスラエルのネット世論操作企業の名称は?」
- 「ネットでニュースを見る人は信用している?」
- 「ロシアのネット世論操作手法」
- 「ロシアのネット世論操作部隊の名称は?」
- 「中国の五毛党の名前の由来」
- 「中国を目の敵(かたき)にするフェイスブック副社長」
- 「中国と一帯一路参加国の人口は世界の人口の何%」
- 「世界で一番たくさんの留学生を海外に送り出している国は?」
- 「中国のデジタル・シルクロード」
- 「測位衛星を世界でもっとも多く保有している国」
- 「フェイスブックの提供する無償インターネットサービス」
- 「フェイスブックの北米とヨーロッパの利用者」
- 「日本のインターネット利用時間は世界の第何位?」
- 「スマホでインターネットを利用している人は何パーセント?」
- 「『いいね』がもっとも多いフェイスブックのページ」
- 「SNS世界トップ10に入っていないのはどれ?」
- 「世界でもっとも殺人的なマルウェア」(MIT Technology Review)
- 「世界最強の諜報機関と呼ばれるイスラエルの部隊」
- 「世界を監視するアメリカ国家安全保障局(NSA)の協力費用」
- 「世界を監視するアメリカ国家安全保障局(NSA)の秘密兵器」
- 「民主主義は世界の主流なの?」
- 「日本で始まる感染症抑止のための追跡方法」