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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第17問!
中国とフェイスブックはさまざまな局面で衝突しています。今日はフェイスブックの副社長の発言や行動についてのクイズです。


イギリスの元副首相で、現在フェイスブックの副社長を務めるニック・クレッグは就任以来、中国を攻撃している。実はフェイスブックと中国はさまざまな分野で競合しているのだ。一民間企業と国家との競合というと奇異に聞こえるかもしれないが、中国が標榜(ひょうぼう)している超限戦という概念においてはあらゆる組み合わせで戦いが起こりうるとしている。テロリスト対国家、企業対国家という戦争も起こるのである。また中国においては大手企業は中国政府の意向に沿った活動を展開しており、企業と国家が一体とも言える。
以前、クイズでご紹介したように(第7問参照)SNSの世界では利用者数の世界トップ10はフェイスブックと中国企業の寡占(かせん)状態となっている。アフリカでは両者ともにアプリ開発への支援や投資を行い、インターネット接続サービスを進め、仮想通貨の発行を準備し、アメリカ議会でロビイスト活動を繰り広げている。

アフリカでの決済や仮想通貨に関してはすでに中国および中国企業が先行して事業を展開している。Alibabaが南アフリカでAlipayシステムのロードテストを行った他、エチオピア政府とeWTP(Electronic World Trade Platform=世界電子貿易プラットフォーム)の構築で合意した。WeChatはケニアのM-Pesa(オンライン送金サービス)と提携しており、着々と中国系企業が手を広げている。
中国の中央銀行がデジタル通貨(CBDC)を実現するきっかけになったのは、フェイスブックの仮想通貨Libra構想が発表されたせいとも言われている。

中国の一連の動きはフェイスブックが展開しようとしているサービスの大きな障害となる。フェイスブックはLibraの裏付けとなる資産の通貨から中国の通貨である元を外す可能性が高い(ドルやユーロなどは入る)と言われている。

最近のフェイスブックは逆風に見舞われている。EUを始めとする規制当局から不十分なプライバシー保護やヘイトスピーチへの対処の遅れ、後手に回っているフェイクニュースなど世論操作への対処、独占禁止法に抵触する可能性などで責められている。ニック・クレッグは、そうした批判に正面から反論するのではなく、「フェイスブックを排除すれば中国がのさばる」と発言した。

中国とフェイスブックの戦いはこれからより激化してゆくと考えられる。


出典
SNS世界トップ10に入っていないのはどれ?(本クイズ第7問)
http://bunko.shueisha.co.jp/serial/kentei/04_01.html
Facebook warns that blowing up Silicon Valley firms through regulation might allow 'sinister' Chinese companies to dominate the internet(2019年1月28日、BusinessInsider)
https://www.businessinsider.com/facebook-lobbyist-nick-clegg-europe-should-worry-about-china-internet-2019-1
China is cornering Africa’s ecommerce market(2019年10月9日、Financial Times)
https://www.ft.com/content/5a43931c-ea73-11e9-a240-3b065ef5fc55
China is going digital in Africa(2019年11月26日、How we made it in Africa)
https://www.howwemadeitinafrica.com/china-is-going-digital-in-africa/63928/
China is trying to beat Facebook by launching its own Libra stable coin(2019年8月20日、The South African)
https://www.thesouthafrican.com/tech/cryptocurrencies/china-is-trying-to-beat-facebook-by-launching-its-own-libra-stablecoin/

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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