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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第18問!
中国の世論操作部隊=五毛党についてのクイズです。


中国の五毛党は有名なネット世論操作部隊であり、中国政府を支持、支援する書き込みを行っていることで知られている。ネットへの書き込み1回の謝礼が五毛(=0.5元)だったことが由来と言われていたが、実際の謝礼が五毛だったかどうかは確認されていない。以前は安価な謝礼であることから学生のアルバイトが多いと想像されていた。

しかし実際には年間4億件以上の書き込みを行っており、そのうちのほとんどを中国政府のさまざまな部局の関係者が担当していたという。中心になっていたのは中国江西省贛州市章貢区(かんしゅうししょうこうく)にあるインターネットプロパガンダ部門ということがわかった。
あからさまな中国政府支持あるいは擁護の書き込みを行うことは必ずしも多くなく、中国政府を批判する書き込みに反論することも多くない。関係のない話題を大量を書き込んだり、炎上させたりして本質的なことから目をそらさせる書き込みが多いという。

五毛党の人数は資料によって大きく隔たりがあり、200万人と言われることもあるし、別の資料では専任は30万人とも言われている。その規模は明らかではないが、かなり大規模な組織であることは確かだ。

2019年の香港の逃亡犯条例改正案への抗議行動では五毛党がSNSに組織だって書き込みを行っていたことが報道され、フェイスブックやツイッターは五毛党に関係するアカウントを停止するなどの措置をとった。
2016年、中国からの独立を志向する政党が政権を握ってから台湾も五毛党のターゲットになった。

なお、五毛党の存在は中国人の間でもよく知られているようだ。カナダ在住の知人の中国人数人に五毛党について訊(たず)ねたところ、半数くらいが知っており、笑いながら「政府に雇われてネットに書き込んでる人たちでしょ」と答えてくれた。畏怖や不安というよりは、中国政府に対する諦念に近い感覚のようだ。


出典
How the Chinese Government Fabricates Social Media Posts for Strategic Distraction, not Engaged Argument.(2017年8月29日、Gary King, Jennifer Pan, and Margaret E. Roberts. 2017.  American Political Science Review, 111, 3, Pp. 484-501)
https://gking.harvard.edu/50C
Information operations directed at Hong Kong(2019年8月19日、ツイッター社ブログ)
https://blog.twitter.com/en_us/topics/company/2019/information_operations_directed_at_Hong_Kong.html
Removing Coordinated Inauthentic Behavior From China(2019年8月19日、フェイスブック社ニュースルーム)
https://about.fb.com/news/2019/08/removing-cib-china/

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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