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最新!世界の常識検定

サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第19問!
世界的に有名なロシアのネット世論操作部隊についてのクイズです。


ロシアがネットの世論操作を行っていることはよく知られており、インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)はその中心となる機関である。

ニューヨーク・タイムズの『The Agency』という記事によれば、数百人規模でツイッターやフェイスブックなどにコメントを投稿する人々がおり、目的に応じて異なる人物になりすましていた。
IRAは2016年のアメリカ大統領選においても干渉工作を行っていたことがわかっており、2018年2月18日に企業および個人に対して起訴状も提出されている。起訴された企業は、IRA、CONCORD MANAGEMENT AND CONSULTING LLC、CONCORD CATERINGの3社で、CONCORD MANAGEMENT AND CONSULTING LLCとCONCORD CATERINGは個人で起訴されたエフゲニー・プリゴジンの会社であり、IRAに資金を提供していた。

2018年12月、IRAがSNSで行っていた世論操作について、より詳細なレポートが公開された。SNS各社(フェイスブック、インスタグラム、ツイッターおよびグーグル関連会社など)から提供されたデータをサイバーセキュリティ企業New Knowledge社と、オクスフォード大学のネット世論操作プロジェクト(The Computational Propaganda Project)が分析し、アメリカ上院情報特別委員会にレポートを提出した。このレポートは主要SNSプラットフォーム企業がデータを提供したことから従来よりも広範かつ緻密な分析結果となっている。
New Knowledge社のレポートの大半はロシアのネット世論操作戦術に焦点を当てており、オクスフォード大学のレポートはSNSプラットフォームごとの統計的な解析を中心に構成されている。それらは相互に補完するような内容となっている。

また、つい先日(2020年8月18日)、アメリカ上院情報特別委員会(The Senate intelligence committee)に2016年の大統領選におけるロシアの干渉についての最終報告書が提出された。アメリカではまだロシアのネット世論操作の全貌を解明できていないのである。五巻(プラス資料)構成で千数百ページにおよぶ詳細なもので、アメリカの選挙システムへのロシアのサイバー攻撃およびトランプ陣営とロシア当局の裏のつながりについて調査、検証したものとなっている。

出典
Russia's Online-Comment Propaganda Army(2013年10月9日、The Atlantic)
https://www.theatlantic.com/international/archive/2013/10/russias-online-comment-propaganda-army/280432/
Documents Show How Russia’s Troll Army Hit America(2014年6月2日、BuzzFeed News)
https://www.buzzfeednews.com/article/maxseddon/documents-show-how-russias-troll-army-hit-america
The Agency(2015年6月2日、ニューヨーク・タイムズ)
https://www.nytimes.com/2015/06/07/magazine/the-agency.html
The Tactics & Tropes of the Internet Research Agency(Renee DiResta, Dr. Kris Shaffer, Becky Ruppel, David Sullivan, Robert Matney, Ryan Fox ”New Knowledge”、Dr. Jonathan Albright ”Tow Center for Digital Journalism, Columbia University”、Ben Johnson ”Canfield Research, LLC”)
https://digitalcommons.unl.edu/senatedocs/2/
The IRA, Social Media and Political Polarization in the United States, 2012-2018(Philip N. Howard, Bharath Ganesh, Dimitra Liotsiou, John Kelly & Camille François,Working Paper 2018.2. Oxford, UK: Project on Computational Propaganda. comprop.oii.ox.ac.uk. 46 pp.)
https://comprop.oii.ox.ac.uk/research/ira-political-polarization/
ロシアがアメリカ大統領選で行っていたこと......ネット世論操作の実態を解説する(2020年8月19日、ニューズウィーク)
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/08/post-5_1.php
アメリカ上院情報特別委員会に提出された最終報告書(2020年8月18日)
https://www.intelligence.senate.gov/publications/report-select-committee-intelligence-united-states-senate-russian-active-measures

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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