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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第22問!
今回は、世界各地でネット世論操作を請け負っていたイスラエルのネット世論操作企業についてのクイズです。


イスラエルのネット世論操作企業アルキメデスは世界的に事業を展開しており、ナイジェリア、セネガル、トーゴ、アンゴラ、ニジェール、チュニジア、マリ、ガーナといったアフリカの国々、ラテンアメリカ、東南アジアなど、少なくとも13カ国で活動が確認されている。
2019年5月16日には、その活動がフェイスブックに検地検知されて、フェイスブックとインスタグラムに存在した、合計265のアカウントとページを削除された。翌日にはAP通信社がデジタル・フォレンジックリサーチラボのコメントと合わせてこのことを伝えた。
削除対象となったアカウントは現地の人間あるいは地方新聞を名乗っていたが、ウソだった。これらのアカウントは政治家からのリークだというフェイクニュースなどを広めていた。

アルキメデスの手法は、まずその国の地方紙やファクトチェック組織に見せかけたサイトを作り、政治家に関するリーク情報を掲載し、地元の政治家を支援もしくは攻撃するというものだった。これらのページは見かけ上、地元で作ったような体裁をとっていたが、実際は国外で運営されていた。また、こうしたページにアクセスを誘導するために9千万円の広告をフェイスブックに出稿していた。
デジタル・フォレンジックリサーチラボは独自のレポート『Inauthentic Israeli Facebook Assets Target the World』を公開し(事前にフェイスブックから連絡を受けていた)、アルキメデスグループの活動の実態を暴露した。そのレポートによると、マリでは地元学生が運営する「C’est faux—les fake news du Mali」(それはフェイクだ—──マリのフェイクニュース)というフェイクニュースを告発するサイトを装ったフェイクニュースサイトも作っていたが、実際の運営者はセネガルとポルトガルにいた。
「Ghana 24」というガーナのニュースサイトを模したプロパガンダサイトを作った際には、イスラエルとイギリスのアカウントによって運営していた。
アルキメデスはネット世論操作対象国で運営されているように装ったページを作っていたが、実際には国外(イスラエル、イギリス、ポルトガルなど)で運営されていた。
デジタル・フォレンジックリサーチラボのレポートによればアルキメデスグループには、思想的な背景があるのではなく経済的な便益が狙いで、特定の政権、政治家、政党から金で依頼を受けてネット世論操作を実行しているという。

フェイスブック、ネット世論操作企業関連アカウントを大量削除(2019年5月20日、ハーバー・ビジネス・オンライン)
https://hbol.jp/192658
Facebook busts Israel-based campaign to disrupt elections(2019年5月18日、AP通信)
https://apnews.com/7d334cb8793f49889be1bbf89f47ae5c
Inauthentic Israeli Facebook Assets Target the World(2019年5月18日、デジタル・フォレンジックリサーチラボ)
https://medium.com/dfrlab/inauthentic-israeli-facebook-assets-target-the-world-281ad7254264

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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