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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第23問!
インド政府は12億人以上の世界最大の生体認証システムを持っています。このシステムを構築した日本企業についてのクイズです。


日本国内ではあまり知られていないが、NECは世界有数の生体認証、監視システムの技術を持つ企業である。現在、顔認証システムについてはAmazonやIBMなど各社が提供を停止している状況だが、NECは提供を継続しているため存在感が高まっている。アメリカのアービング市警、ロンドン警視庁、オーストリア連邦警察、デルタ航空、など70カ国以上に1000を超える認証システムを販売している。カーネギー国際平和財団のレポート『The Global Expansion of AI Surveillance』でも世界的なAI監視システムの提供事業社として中国企業やアメリカ企業とともにNECが掲載されている。

インドの国民IDシステムAadhaar(日本のマイナンバーのようなもの)には、さまざまなデータが紐付(ひもづ)けされている。2009年に始まったこのシステムは12億人以上の生体データを持つ世界最大の生体認証システムであり、顔、両目の虹彩、両手全指の指紋を登録した高精度マルチモーダル生体認証となっている。これを提供しているのが日本のNECである。

『India’s Growing Surveillance State』によれば、Aadhaarは納税や福祉給付金の受け取りに必須になっており、広く普及している。しかし、その一方で問題もある。たとえば特定の州の有権者の投票権を取り上げたり、個人を特定して権利を剥奪することもデータベースを操作するだけで可能となっている。民間企業がAadhaarを利用することも許可されており、プライバシーへの脅威となりかねない。

インドは世界有数のデジタル権威主義国家であり、さらに広範かつリアルタイムの監視システムの導入を検討していることが報じられている。転居、転職、不動産購入、家族の増減、結婚などの情報がリアルタイムで更新され、さらに宗教、カースト、収入、財産、教育、婚姻、雇用、障害、家系図データなど個人にかかわるあらゆるデータを統合したシステムになる予定だ。加えて各戸にジオタグをつけ、インド宇宙研究機関(ISRO)のシステムと統合することも視野に入れているという。


Carnival Cruises, Delta, and 70Countries Use a Facial Recognition Company You’ve Never Heard Of
OneZero、2019年2月18日
https://onezero.medium.com/nec-is-the-most-important-facial-recognition-company-youve-never-heard-of-12381d530510
The Global Expansion of AI Surveillance
2019年9月17日
https://carnegieendowment.org/2019/09/17/global-expansion-of-ai-surveillance-pub-79847
超大規模バイオメトリック認証システムとその実現
2019年9月、NEC技報 Vol.65 No.2
https://jpn.nec.com/techrep/journal/g12/n02/pdf/120212.pdf
India’s Growing Surveillance State
FOREIGNE AFFAIRS、2020年2月19日
https://www.foreignaffairs.com/articles/india/2020-02-19/indias-growing-surveillance-state
EXCLUSIVE: Documents Show Modi Govt Building 360 Degree Database To Track Every Indian
https://www.huffingtonpost.in/entry/aadhaar-national-social-registry-database-modi_in_5e6f4d3cc5b6dda30fcd3462

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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