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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第26問!
今回は、ネットで拡散しやすい話題についてのクイズです。


MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボのレポート「The spread of true and false news online」によると、拡散しやすいのは驚きと嫌悪の感情だったと指摘されている。このレポートはフェイクニュースに焦点を当てているが、実際に「その時」ツイート(もしくはリツイート)されたものを分析対象にしている。フェイクニュースと判明したのはツイートしてからしばらく経ってからなので、ツイートした時点では利用者自身にとってはただのツイートと変わらない。
また、2017年にニューヨーク大学は50万件のツイートを分析した結果、感情的な内容はバイラルで拡散が20%高く、特に同じグループ(保守あるいはリベラル)の中で拡散しやすいことを明らかにしている。世論調査を行っているアメリカのシンクタンク、Pew Research Centerのレポート、「Critical posts get more likes, comments, and shares than other posts」でも批判的な投稿はそうでないものより2倍のエンゲージメント(いいね!やリプライなどの反応)があったことがわかった。
これらからSNSでは感情、特に負の感情を喚起する発言がより多く拡散されやすいことがわかる。

ネット上で人が負の感情に反応しやすいことは、ネット世論操作にもよく利用される。多くのフェイクニュースは特定の相手に対する批判など攻撃的な内容であることが多い。ニューズウィーク日本版の記事、「ネット世論操作は怒りと混乱と分断で政権基盤を作る」では民主主義国におけるネット世論操作に負の感情がうまく利用されていることが明らかにされている。前述のMITメディアラボのレポートでは、感情を刺激するフェイクニュースは6倍速く拡散し、リツイートされる割合も2倍近い。


The spread of true and false news online
2018年3月9日、Soroush Vosoughi1, Deb Roy1, Sinan Aral、Massachusetts Institute of Technology MIT, the Media Lab
Emotion shapes the diffusion of moralized content in social networks
William J. Brady, Julian A. Wills, John T. Jost, Joshua A. Tucker, Jay J. Van Bavel、Proceedings of the National Academy of Sciences Jul 2017, 114 (28) 7313-7318; DOI: 10.1073/pnas.1618923114、https://www.pnas.org/content/114/28/7313
Critical posts get more likes, comments, and shares than other posts
2017年2月17日
https://www.pewresearch.org/politics/2017/02/23/partisan-conflict-and-congressional-outreach/pdl-02-23-17_antipathy-new-00-02/
ネット世論操作は怒りと混乱と分断で政権基盤を作る
ニューズウィーク日本版、2020年10月07日
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/10/post-11.php

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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