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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第28問!
今回は、監視資本主義という言葉を最初に使った人についてのクイズです。


監視資本主義という言葉は、ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のショシャナ・ズボフが最初に使った言葉である。彼女は『The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power 』(Public_Affairs、2019年1月)という本にその詳細をまとめた。なお、Netflixのドキュメンタリー「監視資本主義」にも彼女は出演している。

『The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power 』はネットの過去から現在まで幅広い話題を網羅し、まとめた大著である。ページ数は700ページを超える。そのあまりにも多い情報量のため、本書あるいは監視資本主義について触れている記事は、それぞれ微妙に異なっている。つまりどこをどう紹介するかでだいぶ印象が変わってくるのだ。

貴重で示唆に富む本だが、理解するためにはマルクス、ウェーバー、ピケティ、エリクソン、B.F.スキナー、ハイエク、ハンナ・アーレントなどの幅広い分野の知識を持ち、理解していることが前提になる。特にマルクスの影響が色濃く出ており、いくつかの用語にもそれが現れている。本書には独自の用語がたくさん登場し、それもまた本書を難解なものにしている。

ただし、本書ではネット世論操作についてはあまり言及されていない。近い時期に相次いで発売された『The Reality Game』(オクスフォード大学のThe Computational Propaganda Projectのリサーチ・ディレクターでデジタルプロパガンダの研究者であるサミュエル・ウーリィの著作)や『マインドハッキング』(元ケンブリッジ・アナリティカメンバーのクリストファー・ワイリーによる暴露本)を合わせて読むと、監視資本主義がどのように世論に影響を与えているかを知ることができる。そして3冊の本はそれぞれ現状が改善される可能性に期待し、そのための対策を提案している。

The Age of Surveillance Capitalism: The Fight for a Human Future at the New Frontier of Power (Public_Affairs、2019年1月)
The Reality Game: How the Next Wave of Technology Will Break the Truth(PublicAffairs、2020年1月7日)
マインドハッキング: あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア(新潮社、2020年9月18日)

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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