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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第33問!
今回は、イギリス首相のボリス・ジョンソンが提唱している民主主義国のグループについてのクイズです。


2020年12月15日のThe Guardian誌の「Boris Johnson to visit India in January in bid to transform G7」によると、イギリス首相のボリス・ジョンソンはG7(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ)に3カ国(インド、オーストラリア、韓国)を加えた10カ国によるデモクラシー10(D10)を提唱しようとしている、とある。
以前、ボリス・ジョンソンはG7とは別にD10を組織しようと考えていた。その頃、トランプ大統領がロシアをG7に加えることを提案していた。しかしG7の拡張版であるG20ではすでにロシアと中国が加わったことで混沌としていたことから、D10が同じ状況になることを恐れたのではないかと半年前の2020年6月10日のForeign Policy誌は指摘している。
しかし、その後トランプ大統領が選挙で落選し続投がなくなったことでG7の拡張に方向転換したと思われる。

「自由で開かれたインド太平洋構想」はアメリカが中心となって推進している構想で、アメリカに加え日本、インド、オーストラリアなどが参加する見込みである。構想はアフリカまで広がる壮大なもので中国の一帯一路を彷彿(ほうふつ)させる。ASEANは独自のインド太平洋構想を採択しているが、「自由で開かれたインド太平洋構想」および一帯一路との協力を模索するという立場を取っている。

テクノロジー10(T10あるいはT12)は、デモクラシー10をベースに技術分野を拡張したもので、アメリカ大統領ジョー・バイデンのスタッフが構想したものである。中国の技術分野での台頭に対抗するための連合だが、カバーしている範囲が広いうえ、参加国の利害調整が難しいこと、デモクラシー10のメンバーを中心とした10カ国あるいは12カ国だけでは不十分という指摘もある。

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は15カ国が参加する世界最大の自由貿易圏である。中心となるのは中国、日本、韓国、オーストラリアで、他にニュージーランドや東南アジア諸国が参加している。世界最大とはいえ、中国のGDPが残りの全ての国のGDPの合計に近く、中国主導になることが予想されている。当初はインドも参加する予定であったが、途中で頓挫した。
注意すべきは2020年11月15日にRCEPが署名された点である。逆算すると、RCEPの数カ国(日本、オーストラリアなど)は香港への弾圧と人権侵害で中国を非難しつつ、同時にRCEPの交渉を続けてきたことになる。ここからも加盟国にとって中国は経済上必要不可欠の存在となっていることがうかがえる。


Boris Johnson to visit India in January in bid to transform G7(The Guardian、2020年12月15日)
https://www.theguardian.com/world/2020/dec/15/boris-johnson-to-visit-india-in-january-in-bid-to-transform-g7

Forget the G-7, Build the D-10(Foreign Policy、2020年6月10日)
https://foreignpolicy.com/2020/06/10/g7-d10-democracy-trump-europe/

ASEAN OUTLOOK ON THE INDO-PACIFIC(ASEAN、2019年6月)
https://asean.org/storage/2019/06/ASEAN-Outlook-on-the-Indo-Pacific_FINAL_22062019.pdf

ASEAN版インド太平洋構想、米国など各国が歓迎のコメント(JETRO、2020年7月)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/07/c88d4d3f3445c984.html

US, Europe and UK must unite to keep Chinese tech at bay(Financial Times、2020年10月5日)
https://www.ft.com/content/bc7abf86-f13e-4025-a120-004361aef21a

How Should Democracies Confront China’s Digital Rise? Weighing the Merits of a T-10 Alliance(Council on Foreign Relations、2020年11月30日)
https://www.cfr.org/blog/how-should-democracies-confront-chinas-digital-rise-weighing-merits-t-10-alliance

RCEPで拡大する中国の影響力......中国が世界一の経済大国となる日を想定しなければならない(2020年11月17日、ニューズウィーク)
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2020/11/rcep.php

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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