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サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第40問!
今回は、民主主義を測定する指標についてのクイズです。


民主主義の指標はいくつかあり、代表的なものは民主主義指数とV-Demである。民主主義指数はEconomist Intelligence Unit(英エコノミスト誌の研究所)が2006年から指数を公開している指標で、選挙の手続きと多様性、政府機能、政治参加、政治文化、人権を評価軸にしている。V-Demは2014年にスウェーデンに設立されたV-Dem Instituteが毎年公開しているもので、選挙、自由、参加、議論、平等を軸としている。

どちらも新しい指標を公開する際にレポートとランキングも公開しており、公開のたびに民主主義の状況は悪化しているとどちらも述べている。
V-Demは民主主義指数に比べると歴史は浅いが、評価のもととなっている民主主義に関するデータを公開しており、民主主義を研究する者にとって貴重なデータベースとなっている。

民主主義指数の最新版は2021年2月に公開された『Democracy Index 2020: In sickness and in health?』である。民主主義指数では「完全な民主主義」、「瑕疵(かし)のある民主主義」、「ハイブリッド」、「権威主義」の4段階に分けているが、「完全な民主主義」の国数は13.8%で人口では8.4%、「瑕疵のある民主主義」の国数は31.1%で人口は41.0%だった。民主主義が国の数でも人口でも過半数を割り込んでいた。世界における民主主義の存在感、影響力は低下していると言わざるを得ない。
コロナ・パンデミックのために各種の自由が制限され、ロックダウンが行われたことにもっとも影響があった。地域別に見るとヨーロッパのフランスとポルトガルが「完全な民主主義」から脱落し、アジアの台湾、日本、韓国が「瑕疵のある民主主義」から「完全な民主主義」へとランクアップした。特に台湾はコロナの対応も含め、高く評価されている。また、アメリカの民主主義が難しい局面に立たされていることも指摘している他、アフリカのマリとトーゴで民主主義が後退している。
各国別のランキングを見ると上位=「完全な民主主義」は西ヨーロッパ諸国が多いが、今回フランスとポルトガルが脱落し、アジアから3カ国が加わったことでバランスが変わった。ヨーロッパ以外で10位以内に入っている国はニュージーランドとオーストラリアだけでここはあまり変化していない。
ただ、世界的に民主主義が後退している一方で、きわめて低い水準(権威主義)だった国々の状況は改善されていることも少なくない(ただし、完全な民主主義になったわけではない)。
瑕疵のある民主主義(31.1%)までを含め、なんらかの形で民主主義である国は全体の44.9%(31.1%+13.8%)となっているが、どこまでを民主主義国家として考えるかは難しい。たとえば人権の保護などの民主主義的価値観を守るという観点で考えると、瑕疵のある民主主義の国は、全体主義や独裁主義国に経済協力や軍事協力を行うため、民主主義の枠内に入れるのは難しくなる。


Democracy Index 2020: In sickness and in health?
https://www.eiu.com/n/campaigns/democracy-index-2020/

V-dem
https://www.v-dem.net/en/



プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

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