よみもの・連載

最新!世界の常識検定

サイバーセキュリティにくわしい小説家・一田和樹が出題する、ネット時代の新常識クイズ第52問!
今回は、科学的で合理的な選挙方法についてのクイズです。


社会的選択理論は選挙のように集合体の意思決定を行う際のメカニズムを研究する学問である。この理論によれば現在ほとんどの国で行われている多数決による選挙は民意を反映する方法としては不適切である。その結果、民意を反映しない選挙結果をもたらすことになる。

たとえば、ひとりの代表者(大統領、知事、議員など)を選ぶ際、5人の候補者がいるとする。その候補者を2人ずつ抜き出して比較した場合に一番勝率が高い者が、全体で多数決を取った場合に一番にならないことはよく発生する。逆に複数の候補者がいる時に1対1でもっとも勝率の低い者が多数決で一番になることもある。これは全体での多数決という方法に起因する問題である。こうした問題を避けるための選挙方法はすでに考案されており、採用している国もあるが、先進国(たとえばOECD)の中で採用している国はない。

現在の方式による選挙の欠陥は200年以上前に証明されていたが、誰も本気で選挙制度の改革に取り組もうとはしてこなかったため、ほとんどすべての民主主義国は民意を反映しない可能性がある選挙方法を使い続けている。そのため民主主義という理念は共有されていても、それを実現するための具体的な選挙方法についてはなんの根拠もないまま慣習として繰り返されてきた。

『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』(坂井豊貴著 岩波新書、2015年4月22日)
『社会的選択理論への招待 : 投票と多数決の科学』(坂井豊貴著 日本評論社、2013年11月22日)

プロフィール

一田和樹(いちだ かずき) 東京生まれ。経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
10年、「檻の中の少女」 で島田荘司選 第3回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
著書に『女子高生ハッカー鈴木沙穂梨と0.02ミリの冒険』『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』『キリストゲーム』『絶望トレジャー』など。
http://www.ichida-kazuki.com/ Twitter:@K_Ichida

Back number