よみもの・連載

今日も、日本語学校で

第2回「ヘリコプターとハリーポッター
     〜〜カタカナって難しい!」

北村浩子Hiroko Kitamura

 このエッセイを書くにあたって、日本語教師になったばかりの頃の日記を久しぶりにめくってみた。
 比喩ではなくめまいがした。
 恥を忍んで少し書いてみようと思う(一部シナリオ風になっております)。

①2月某日 漢字の授業

私:はい、これは「手紙」です(と言って「手紙」と大きく書かれた文字パネルをホワイトボードに貼る)。てかみ、じゃありません。てがみ、です。「手」は勉強しましたね。では「紙」を書きましょう。
(私、ホワイトボードに「手紙」を書き順に沿って書く。学生たち、ノートに書く)

私:はい、次は(と言いながら「新聞」と書かれたパネルを貼る)しんぶん、です。意味は分かりますね。新聞、に紙で「しんぶんし」です。「紙」の読み方は「かみ」と、てがみの「がみ」、そして「し」。3つあります。
中国人Oさん:先生。
私:はい。
Oさん:新聞と新聞紙、違いますか?
私:えっ?
Oさん:新聞紙……(はどういう意味かと聞きたい顔)
私:あー、新聞紙は……
Oさん:新聞紙(という言葉は)いつ使いますか?
私:そうですね、新聞紙は……

 新聞紙でお弁当を包みます、という文がぱっと浮かぶが、そもそもお弁当を新聞紙で包む人は多分そんなにいない。新聞紙って、引っ越しのときにクッション材として使うくらいしか用途がないんじゃないか。あと、ゴキブリを叩(たた)くとき? でもそんなのどうやって説明すればいいの?
 結論が出ないまま、とにかく喋(しゃべ)る。

私:えー、新聞を読みます、は言いますが、新聞紙を読みます、は言いません。
Oさん:じゃあ新聞紙は何ですか?
私:(うーん、そう来るよなあ……)

 答えられず「明日話します」と言ってしまった。学生たち、ふーんという顔。ああ、またダメ教師の印象を自ら強めてしまった。
 同僚の先生に聞いたら「新聞紙は紙の一種ってことを説明すればいいんじゃない? テストの紙、カレンダーの紙、新聞の紙です、って」と教えてくれた。そうか! でも、すぐに思いつかないのが本当にもどかしい。

プロフィール

北村浩子(きたむら・ひろこ) フリーアナウンサー、ライター、日本語教師

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