よみもの・連載

今日も、日本語学校で

第2回「ヘリコプターとハリーポッター
     〜〜カタカナって難しい!」

北村浩子Hiroko Kitamura

②2月某日 数詞の授業

私:みかんを、ひとつ、ふたつ、みっつ……とお、です。 みかんを1つください、2つください、3つ……
韓国人Kさん:先生。
私:はい。
Kさん:みかんを11つ、言いますか。
私:11つは言いません。
Kさん:みかんを11……(欲しかったら何て言うの? という顔)
私:あー、「個」という言い方もあります。
Kさん:11こ?
私:そうです。
Kさん:ひとこ、ふたこ?
私:そうじゃありません。
Kさん:ここのつ、とお、11こ、12こ?
私:えーと……そうじゃありません。
Kさん:「こ」は何ですか?

 ああ、ごめんなさい。そうだよね、混乱するよね。ひとつ、ふたつは「ひとつ質問があります」みたいに、形のないものにも使えることを教える授業だったのに、とっさに「個」を出してぐちゃぐちゃにしてしまったよ……後悔。

③2月某日 漢字の授業

私:はい、これは「写真」です(と言って「写真」と大きく書いた紙を貼る)。写真を撮ります、の写真ですね。写真の写は、うつしますとも読みます。
セネガル人Sさん:先生。
私:はい。
Sさん:うつします、は、いつ使いますか。
私:あー、写真を写します、です。
Sさん:写真を撮ります?(じゃないの?という顔)
私:はい、写真を撮ります、です。
Sさん:うつします、は?

 写します写します、テレビにうつ……いや違う、それは映ります、だな。うつしますうつします……あー! 何をうつします?

「宿題を写します」
 ぼそっとそう言ってくれたのは、鮮やかな黄色の髪の韓国人、Mくんだった。ああ、なんという助け舟!

私:そう、そうです! 友だちの宿題を見ます、書きます、それが写します、です!
ほうほうと頷(うなず)くSさん。Mくんありがとう。
……でも、宿題写しちゃいけないけど!

* * *

 こんな失敗を、当時は毎回のようにしていた。読んでいるだけでじわっと汗が出る。今、完璧な授業ができているわけではまったくないが、学生が疑問を持ちそうなところを、昔より少しは予測できるようになっている。