よみもの・連載

今日も、日本語学校で

第2回「ヘリコプターとハリーポッター
     〜〜カタカナって難しい!」

北村浩子Hiroko Kitamura

 予測と言えば、授業をし始めた頃、「え、そうだったの!」と思ったことのひとつに「カタカナの難儀さ」がある。
 多くの日本語学校では、ひらがな、カタカナ、漢字の順に表記を教えている。ひらがなとカタカナは、濁音や半濁音、促音(っ)や拗音(きゃきゅきょなど)、長音(おにいさんの「にい」のようなもの)も含めて約1週間で学び、その後も読み書きを継続的に練習していくのだが、国籍に関係なく、学生たちは「カタカナ、はぁ……」とため息をついている。
 カタカナは基本的に外来語を書くときに使われるわけで、外来語は外国の(主に英語の)言葉だから、まあ共通語みたいなものだし覚えやすいんじゃないかなー、とふわっと考えていた。
 大きな間違いだった。

「先生、ハリーポッター、日本もハリーポッターですか?」
 休み時間にロシア人のTさんが尋ねてきた。
「ハリーポッター? 日本でもハリーポッターと言いますよ」と返すと、Tさんは「あ、ハリーポッターじゃありません」と言う。
「ハリーポッターじゃなくて、ハリーポッターです。わたしの父はハリーポッターの会社で働いています」
 んんん? ハリーポッターの会社? 映画の会社?
 インド人のRさんが「先生、Tさんはヘリポターと言いました」と間に入ってくれる。ヘリポター……「あ、もしかしてヘリコプターのこと?」「そうです! ヘリコプター」
 こんな風に、学生の発音が良いために、何を聞かれているのか分からないということが、恥ずかしながらよくある。「英単語の齟齬(そご)」とでも言ったらいいだろうか。私が「ハリーポッター」だと思った「helicopter」は、日本語で書くと「ヘリコプター」だが、彼らには「ヘリコプター」とは聞こえないし、そう発音しない。カタカナを書くとき、彼らはその「既知の英語」をまず日本語に変換するという、なんとも手間のかかることをしなければならないのだ。