よみもの・連載

捜し物屋まやま

第一回 後編

木原音瀬Narise Konohara

 そういえば白雄は彼氏が『三人殺している』と言っていたが、その通りだった。いったい何が見えてたんだろう。見えるといえば……バタバタだったキャンプ場からの帰り、管理人小屋でチェックアウトをしていると「大変でしたね」と管理人に声をかけられた。「お互い、散々でしたよね」とやりとりする。いきなりの逮捕劇や警察の事情聴取で、自分も管理人も明け方まで解放してもらえなかった。何気なく管理人の背後を覗き込む。
「今日はお子さん、いないんですね」
 管理人は首を傾げた。
「ほら、昨日は海水パンツの男の子が二人、後ろで遊んでたじゃないですか」
 管理人の顔が強ばる。
「俺……独身だし、子供をここに入れたこともないですけど……」
 全身がスッと冷たくなる。じゃあ自分が見たアレは……小さな子供、海水パンツ、二人とも濡れてて……そういえば、彼氏が陽奈さんを背負って夜の川に来た時も、子供が二人、後からついてきていた。あれで親子連れかと思い込んでいたのだが……自分が飛び出した時にはいなくなっていたので、今の今まですっかり存在を忘れていた……。
「あっ、すみません。俺の気のせいだと思います」
 取り繕うように笑った。すると管理人は「またか」とボソリと漏らした。そして「……このことネットに書かないでくれませんか。また客減るんで」と俯く。気の毒になってきて、根本的な解決になるかどうかはわからないまま「お祓(はら)いとかしてみちゃどうですかね」とアドバイスした。
 帰り、ジープを運転しながら、徳広は二度とこのキャンプ場に来ることはないだろう、いや、来ないと心に誓った。
「そうだ」
 コーヒーを飲んでいた三井が、マグカップをテーブルに置いた。
「白雄君と和樹君、捜し物を占う時に、飾りのついた数珠を使っているの、知ってますよね」
 確かにそういうのを使っていた気がする。陽奈さんの時にアイテムがないと言っていたのはそれのことか。
「あれが気になって、調べてみたんです。そしたら東北地方のイタコが使ってるものと似てたんですよ。もしかして二人は、イタコみたいに口寄せしてるんじゃないかなって思うんです」
 徳広は首を傾げた。
「口寄せって、亡くなった知り合いや家族を自分に乗り移らせて話をするってアレでしょ。え、ちょっと待って。二人は亡くなった人に捜し物を聞いてるってこと?」
「だとしたら、あの捜し物スタイルも納得じゃないですか」
 徳広は「いやいやいやいや……」とソファの上でのけぞった。
「それは……ちょっとどうなの? 捜し物のために、いちいち依頼主の家族をあの世から呼び寄せてるってことでしょ。向こうもいい迷惑じゃないの」
 三井は考え込んでいたが「背後霊」とぽんと手を叩いた。
「背後霊ならいつも後ろにいるって話だし、物をどこに置いたのか知っているんじゃないですか」
「ちょっと待って! そっちも問題でしょ。捜し物に背後霊とか、そんなお手軽に使っていいの?」
「それは……わかんないですけど……」
「そっちよりも俺はさ、二人がいると犯人がすぐ自供しちゃうのが気になってるんだよ。ほら、三井さんの放火犯の時も、自分がやったって俺らの前でゲロったでしょ。今回の殺人犯も自分でべらべら自供しちゃってたし。あの二人の前だと、なんか嘘をつけない空気になるんじゃないかなって……」
「そうなってくると、もう絶大なる神の力じゃないですか」

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

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