よみもの・連載

捜し物屋まやま

第二回 前編

木原音瀬Narise Konohara

「「だれにも、いわないで」」
「そっか。ひみつのまほうなんだな」
 和樹は「よし!」と両手を握った。
「おれもひみつにしてやる」
 白雄の顔がホッとした感じになる。
「ひみつにするから、なんかはなして」
 白雄の腕を握ったまま、ワクワクしながら待つ。
「「つねられたとこ、いたい」」
 ぽつりと出てくる。
「あ、ごめん」
 謝っても「「いたい、いたい」」と言うから、つねったところを何回も撫でた。
「「のど、かわいた」」
 口が動く。
「じゅーす、のむ?」
「「のむ」」
 和樹は白雄の手をひっぱって台所に行った。コップが一つしかなかったから、いっぱいジュースを入れて、床にちょっとこぼしたけれど、足の裏で擦(こす)ってなかったことにして、交代で飲んだ。白雄は和樹の手を掴んで「「おいしい」」とにやっと笑った。
 その日の夜、子ども部屋で白雄と一緒の布団で寝た。喧嘩するまで凄く嫌いな奴だったのに、くっついていっぱい話した。けど白雄が喋るのも自分の口だから、次の日はちょっとだけ喉が痛かった。
 一晩で自分たちは親友になった。口のきけない白雄の代わりに、自分が口を貸してやった。口を使うことは秘密で、白雄は自分がいないと言いたいことがすぐに言えないから、いつも一緒にいた。
「一緒にいた方がいい」それがいつからか「一緒にいないといけない」と義務になった。白雄は危ない。一緒にいないと、何をするかわからない。
 カチカチと音がする。顔を上げると、白雄がスプーンでカレー皿の縁を叩いていた。
「終わった?」
 コクリと頷く。
「じゃ帰るか」
 支払いは和樹がすませ、二人で外に出た。空気がどんよりと重たい。日中の雨で路面はまだ湿っていて、あちらこちらに水たまりがある。
 白雄が右腕を掴んできたと思ったら「「コンビニよってく」」と人の口を使ってきた。

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

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