よみもの・連載

捜し物屋まやま

第二回 後編

木原音瀬Narise Konohara

 ターゲットが店から出てくるまですることがないので、ゴミ箱の横に集まっていたら「ねえ君」と声をかけられた。
「君たち、ここで何しているの?」
 警察官の職務質問だ。そして見た目が一番怪しい三井にその視線は向けられている。ポリさんが「夜中に男が集団で集まってたら、とりあえず声をかけます」と話していたが、その通りだ。おどおどせずにはっきり受け答えして、名刺の一つでも出せばさくっと解放します、とも。
「動画配信をする予定で、メンバーを待ってます」
 ポリさんのアドバイス通り、危険なビジュアルとは対照的にしっかりした口調で受け答えする三井に、警察官は意外そうな表情を見せたものの「動画ねぇ」と眉を顰(ひそ)める。
「そういう人、最近多いね。仕事は?」
「昼間は法律事務所で受付事務をしています」
 三井が名刺を取り出す。警察官は三井の名刺とビジュアルを交互に見比べる。
「メタルバンドのファンなの?」
 三井は「いいえ」と堂々と首を横に振った。
「いつもと違う雰囲気で、目立つようにコーディネートしてもらいました。動画配信は見てもらってなんぼの世界なので」
 法律事務所勤務というしっかりした肩書き。そしてビジュアルに何のポリシーもないというのが効いたのか、警察官は「あまり騒がないように」と注意して去って行った。一番ヤバそうな見た目の三井がパスしたので、後は大丈夫だろう。
「失敗できないし、念のため予行演習しとこうよ」
 徳弘がスマホをこっちに向ける。インタビュアーは自分なので、和樹は「こんにちは」「どうもー」などと喋ってみる。このノリ、どっかで見たなと自問自答する。そう、芸人が舞台に出てくる時の常套句(じょうとうく)だ。
「何かテンション低いなぁ。アネ7のライブの時みたく、もっとノリよくいこうよ」
 徳広はそう言うが、アネ7のライブに行ったことがあるのは、この三人の中では三井だけ。どーしろと……と思っていると突然、三井が踊りだした。これはちょっと前、公園で見たダンスだ。よくわからないが、ハードな恰好でハードに踊ると変な迫力がある。
「三井さんはオッケー。白雄君と和樹君には、もっとムーブメントが欲しいな。人に見てもらうことを前提にしてるんだからさ」
 変なところにこだわりを見せてくるので、和樹も片手を振りながら「銀座にやってきたよ〜」と喋ってみる。我ながら棒読み感が酷(ひど)い。白雄は完全無視でスマホカメラに背中を向けていた。試し撮りを繰り返しているうちに、松崎からラインがきた。
『みせ でる』
 短文にリアリティがある。

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

Back number