よみもの・連載

捜し物屋まやま

最終回 前編

木原音瀬Narise Konohara

「「しんどい」」
 和樹の口から出てくる自分の言葉。
「だから病院行こうぜ。連れてってやるからさ」
 頭を優しく撫(な)でられる。
「「病院行きたくない」」
「お前なぁ……」
「「一緒に寝てよ。そしたら夕方病院行く」」
「何だよその交換条件。意味わからん。ぐずってないでサッサと行けばいいじゃん」
 和樹は部屋を出ていった。そしてスマホと充電器を手に戻ってくると、白雄の隣に入ってきた。隣でゲームをはじめた男にべたりとくっつく。
「お前、熱っつ。俺をウイルスまみれにするつもりかよ」
 文句を言いつつ、スマホのゲームを続ける。そうしているうちに、自分よりも先に和樹の方が寝落ちした。
 昔から具合が悪くなると和樹はいつも傍で寝てくれた。和樹の気配があると、脱力するぐらい安心する。これは安全なものだと知っているからだ。
 母親が欲しかったのもコレだったんだろうなと思うが、あの人は死ぬまでコレを手に入れることができなかった。いや……こういうものは、気持ち一つで変わる。自分がコレだと決めればいいのだ。そして母親は、自分の子に対しても、そこに安心を見出(みいだ)そうとしなかった。
 人に自慢できるかわいい子供と、同じような境遇の隣人と助け合っていく生活。母親の心はそれで均衡を保っていたが、バランスが崩れ始めたのは、白雄が小学四年生になった頃だった。

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

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