よみもの・連載

捜し物屋まやま

最終回 前編

木原音瀬Narise Konohara

「おとうさん」
 その一言で、間山の顔が驚きと、そして喜びにあふれた。
「急に子供が二人になったら、やっぱり困る?」
 遠慮がちにきいた和樹に、間山は首を大きく横に振った。
「そんなことない。おじさ……おとうさんは子供が大好きだ。二人でも三人でも、どんとこい。大丈夫だ!」
 和樹は「やったあ」と両手をあげ、白雄に飛びついてきた。言わせようと思ったのに、勝手に喋った。和樹は白い。ほんとに白い。そんな自分の後ろで、母親は相変わらず黒い顔でぶつぶつと文句を言っていた。
 そうして自分は、和樹たち家族の中に寄生虫のように入り込んだ。学区内にある新しいマンション、和樹の部屋を二人で使うことになった。この家族はみんな白いから大丈夫だと思っていたのに、間山の親族には黒いのが多かった。そして和樹の母親を「財産目当ての再婚」と揶揄し「いくら連れ子の息子にお願いされたからといって、赤の他人の子を引き取るなど常識がない」と陰口を叩(たた)いた。
 この家庭に留まるためには、黒い奴らの声を封じないといけない。そのために自分は良い子になり「引き取ったのは間違いだった」と絶対に言わせてはいけなかった。

 勉強は面倒くさいが、やればできる。問題をおこさず、勉強してそこそこの位置をキープしつづけるのは、そう難しいことではなかった。

(次回は5月17日アップ予定です)

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

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