よみもの・連載

捜し物屋まやま

最終回 後編

木原音瀬Narise Konohara

「……ほんとは悪いなんて、一ミリも思ってねぇだろ」
「「俺、謝ってるのに」」
「口先だけで謝りゃいいってもんじゃねえんだよ!」
 謝っても怒るので、最終的に何も言えなくなる。そして喧嘩の原因を作り出した住吉たちを恨んだ。あいつら四人、まとめて事故にでもあえばいい。真っ黒い顔で、人に迷惑をかけることしかしない奴らの方が、よほどこの世界に必要のない存在だった。
 四人は誰も死ななかった。住吉はあまり学校に来なくなり、たまに来ても殆どクラスにいなかった。仁木と山村は別のグループに入った。友人の彼氏を寝取った荒瀬はぼっちになり、二年になる時に転校していった。
 住吉と揉(も)めて以降、表立って自分を虐める輩(やから)はいなかった。陰口を叩(たた)く奴はいたが、目の前では言わない。なのでいたって平和に過ごした。
 中学でつるんでいた仲間は、別々の高校に進学した。高専に行った奴、私立に進んだ奴……和樹と自分は家から近いという理由で、のんびりした雰囲気の公立高校に進んだ。塩原は進学校を選び、中学を卒業してから会うことはなかった。縁は切れたと思っていたのに、どうして今頃になって事務所にやってきたんだろう。
「ネットで見たら、ここがすごくよく当たるって評判だったんだよ。けどまさかお前がこういう、占い師みたいな仕事をしてるとは思わなかったわ。作家デビューしたんじゃなかったのか? 誰かに聞いた気がするんだけど」
 和樹は「そっちはまあぼちぼち」と答える。「ぼちぼちって何だよ」と塩原は笑い、少し間をおいて「実はさ……」と切り出した。
「俺のじいちゃん、先週から行方不明なんだ。捜索願は出したし、心当たりのある場所は全部探したんだけど見つからなくてさ。世話をしてたのが俺の母さんで、ちゃんと見てなかったんじゃないかって親戚からメチャクチャ言われたんだよ。爺ちゃんは認知症ぽかったし、仕方ないんじゃねって俺は思うんだけど、まぁ、外から見てるだけの奴らってのは無責任だからさ」
「……大変だな」
 和樹の声は同情的だ。
「今回のことで母さんが精神的にかなりキてるから、何とか爺さんを見つけらんねーかなってネットを見てて、ここを見つけたんだ。こういうとこに来るの初めてだし、ネットの評判はヤラセで実はぼったくり詐欺とかだったら嫌だなって思ってビクビクしながら来たら、いきなり中学の時のダチが出てきてビビったわ」
 少し間があった。
「事情はわかったし捜してやりてぇけど、俺一人じゃ無理なんだよな。うちは二人でやってて、占いみたいなやつで捜し物のアタリをつけんだけど、メインにやってるのは白雄でさ。で、さっきも話したけど、あいつはしかでダウンしてるから」
 ふーんと塩原は相槌(あいづち)を打つと「お前だけじゃ駄目なの?」と聞いてきた。

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

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