よみもの・連載

捜し物屋まやま

最終回 後編

木原音瀬Narise Konohara

「俺は聞き込みとか、歩いて捜したりってアナログ専門なんだよ。……今は無理だけど、白雄の具合がよくなり次第、連絡しようか」
 塩原は「いいわ」と断った。
「待ってる間に見つかるかもしんないし。様子見て、頼みたくなった時にまた考えるわ」
「悪いなぁ」
「まぁ、すんごい期待してたわけじゃないから」
 上から目線の物言いにイラッとする。昔から、グループの中で一番成績がよかったことで優越感があったのか、微妙にこちらを見下すような言葉遣いをすることがあったが、今も健在だ。
「お前さ、今どこに住んでんの?」
 用が終わったなら帰ればいいのに、和樹に聞いてくる。
「どこって、ここだけど」
 ここ!と声が裏返る。
「親の持ちビルなんだよ。事務所の奥が住居になってて、管理がてら白雄と二人で住んでんの」
「マ〜ジか……」
 ため息が聞こえる。
「相変わらず白雄はお前にべったりなわけか」
「ベッタリっていうか、俺ら兄弟だし一緒に住んでもおかしくないだろ」
「血は繋がってないし、遺伝子のスペックが違うの丸わかりじゃん」
「……それって俺の顔と身長ディスってるのか」
 塩原が沈黙し「嘘でも冗談って言え、馬鹿」と和樹に笑われていた。
「幼稚園の時からの幼なじみで、小四からは戸籍上でも兄弟だし、もう兄弟でいいだろ」
「お前、相変わらずザックリしてんなぁ……今だからぶっちゃけるけどさ、俺ずっと白雄が苦手だったんだよな」
「そうなの?」
「捜し物も、占い系で白雄がやるってのを聞いて、納得というかさ。あいつ、昔っから薄気味悪かったんだよな。何にもないとこをぼーっと見てたりしたし」
 自分に関心はないと思っていたのに、意外と見られていたらしい。学校には「この世のものではないもの」がやたらと多く、頻繁に話しかけられて大変だった。
 音がしないよう、住居部分と事務所の間にあるドアを十センチほど開けた。大人になったが、塩原には中学生の時の面影が残る。そして相も変わらず顔には薄黒いもやがかかっていた。
 そんな塩原の背後に白髪の爺さんがいた。目が合うと一瞬で傍にやってきて「あんた、わしが視えるのかね?」と聞いてきた。
 この雰囲気は、親族っぽい。こいつが探してる爺さんじゃないのか? 自然と口許(くちもと)が笑っていた。お前の爺さんはとっくに死んでる。教えてやるから、サッサと出ていけ。帰れ。
 廊下から事務所へ出て行こうとしたのに、猛烈な目眩(めまい)に襲われた。その場にしゃがみこむ。重い。胸が潰れそうだ。誰かが乗っている……もしかして婆さんか?
【どけ、くそババア】
 目の前が暗くなる。重い、重い、息が苦しい……と思っているうちに、意識が飛んでいた。

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

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