よみもの・連載

捜し物屋まやま

最終回 後編

木原音瀬Narise Konohara

 和樹は白い。その白い人間の着ている上着の裾を引っ張った。
「何、どうした?」
 無言でいると、首を傾げる。
「具合悪い時に、横でベラベラ喋られると鬱陶(うっとう)しいか?」
 そう言って腕を握られる。話をしたいという和樹からの意思表示だ。
「「俺が弱っていると、楽しい?」」
 呆(あき)れた顔で「んなわけないだろ」と返される。
「「本当は俺のこと鬱陶しいんでしょ。死ねばいいとまではいかなくても、どっか行けとか思ってるよね」」
 和樹は「はあっ?」と呆れたように肩を竦めた。
「お前なぁ、なにメンヘラ彼女みたいなこと言ってんだよ」
 和樹は義弟を鬱陶しく思っているかもしれないが、悪意はない。優しくてかわいそうな和樹。だから自分なんかにつけこまれている。そしてこの白い男から永遠に離れる気はない。
 和樹は大学卒業後は作家でやっていくと宣言し、就職はしなかった。なのに全然小説を書けていないので、収入はない。そこで養父は所有している不動産ビルの管理を和樹と自分の二人に任せ、家賃収入をそのまま息子の収入として使わせてくれた。養母は「二人は成人した大人よ。親が面倒見る必要はないわ」と言っていたが、養父は自分たちに甘かった。
 ビルは二階までは既にテナントが入っていて、三階と四階は空いていた。貸し出してもよかったが、四階は奥が住居になっている。形ばかりの自立もできるし家賃もいらないので、二人で実家を出てビルに住むことにした。
 空いていた事務所部分で「便利屋とか捜し物屋みたいなことをやりたい」と先に言い出したのは、和樹だ。
「白雄、お前って捜し物が得意じゃん。あれを使って困ってる人とか助けるのってよくね?」
 返事をしないでいると「お前が参加すんのは、暇な時でいいからさ。後は俺が適当にやるから」と言われた。和樹はよく物をなくす。そういう時、憑いている人に聞いたり、和樹の持ち物や、本人に触れて読み取り、教えたことが何度かあった。
「お前の能力、過剰な自衛とか過剰な反撃とか、くそ意地悪い方向じゃなくてさ、人の役にたつことに使おうぜ。そっちの方が断然、いいじゃん」
 面倒臭いと思ったが、和樹はやる気だったし、二人で仕事をするというのは悪くなかった。
 ビルの四階に引っ越したあと、荷物を片付けていた時に、黒光りする数珠が出てきた。生みの母親の遺品は段ボールにつっこんだままで見たことがなかったし、開けるつもりもなかったが、今回の引っ越しで和樹の方の荷物にその段ボールが紛れ込んでいた。

プロフィール

木原音瀬(このはら・なりせ) 高知県生まれ。'95年「眠る兎」でデビュー。ボーイズラブ小説界で不動の人気を博す。
ノベルス版『箱の中』『檻の外』が’12年に講談社より文庫化され、その文学性の高さが話題に。
『美しいこと』、『秘密』、『吸血鬼と愉快な仲間たち』シリーズ、『ラブセメタリー』、『罪の名前』など著書多数。

登場人物

間山和樹(まやま・かずき) 「捜し物屋まやま」所長兼小説家。25歳。白雄とは血の繋がらない兄弟。

間山白雄(まやま・しお) 捜し物屋スタッフ兼マッサージ師。25歳。不思議な能力があるようだが……?

徳広祐介(とくひろ・ゆうすけ) 捜し物屋と同じビルに入っている法律事務所で働く弁護士。37歳のドルオタ。

三井走(みつい・かける) 元ひきこもりで、現在は捜し物屋の受付&法律事務所の電話番兼受付の35歳。徳広と推しが同じドルオタ。

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